展覧会紹介 「くらし、えがく。ちひろのアトリエ」その③

練馬区下石神井にあった、ちひろの自宅兼・アトリエは、1963年に増築され、ちひろの夫の両親が同居し、ちひろは2階にはじめてアトリエ専用の部屋を持ちます。仕事も、家に住む人も増え、忙しい日々でした。

アトリエで電話をとるちひろ 1963年夏

その2年後の1965年、絵本画家の赤羽末吉から、長野県北部の黒姫の信濃町が児童文化関係者たちに土地を安く提供するのでどうか、と声をかけられます。その安さにちひろは最初迷いながらも土地を購入し、山荘を建てることとなります。設計は、土地の近くに山荘を先に構えた編集者の川井千恵子から紹介された、気鋭の女性建築家・奥村まことでした。

仕事場で電話をとる奥村まこと 1962年頃

2人の女性は12歳年齢が離れていたものの意気投合し、1966年の夏に、念願の黒姫山荘が建ちます。床から天井まである大きな窓を通して画室や居間には外の移り変わる景色が見え、ちひろはこの山荘兼アトリエで過ごす時間を楽しみました。

黒姫山荘のアトリエの窓から 1968年

山荘内には、考案者である猪谷六合男から名をとった猪谷式薪ストーブがあり、ちひろはその前に座ったり、火をくべたりするのが好きだったといいます。そのためでしょうか、このストーブはちひろの作品に3度も登場しています。ここに描かれた少女の姿はどこかちひろ自身にも重なります。

いわさきちひろ ストーブに薪をくべる少女 1973年

◆開催中の展覧会
くらし、えがく。ちひろのアトリエ
2022年10月8日(土)~2023年1月15日(日)