いわさきちひろ 「垣根ごしにのぞく子ども」 1970年

主人公の少女と隣に越してきた少年が友だちになるまでの心の機微を描いた絵本『となりにきたこ』の一場面。「となりにきたこどんなこ、となりにいるこどんなこ」のことばとともに、ちひろは二人の期待と不安の入り混じった心情を、のぞく仕草で語らせています。後ろ姿で少女の表情は見えませんが、開いた指先からは緊張した心持が伝わってきます。垣根は大胆なストロークで抽象的に描かれ、間からのぞき返す少年の顔をより強く印象づけています。この絵本には、ちひろの隣家の男の子との幼い日の思い出が投影されているようです。オリーブグリーンの輪郭線は、パステル作品の特徴のひとつです。