[表紙の作品] いわさきちひろ どこかではるが 1960年

歌を絵と楽譜ともに楽しめる『トッパンの童謡絵本』シリーズ。そのなかに掲載された童謡、「どこかで はるが」(作詞: 百田宗治、作曲: 草川信)のために描かれた作品です。
詩のなかでは春の訪れが、水の音や鳥の声、山から吹く風など、特に耳から感じられるように唄われています。ちひろは、手前に芽の膨らんだ木の枝を配し、その間から見える、春の野を散歩するふたりの子どもを描いています。新芽の黄緑が、背景のにじみや、足元の地面の色にも含まれ、よく見ると黒猫の目の色も明るいグリーンで、画面全体に新しい季節を迎えるすがすがしさが感じられます。