[表紙の作品] いわさきちひろ 「見つめる少女」1967年

静かにこちらに視線を向けた黒い瞳と結ばれた唇、指先は少し力が入ったように重ねられています。
「どうする、表紙?」とちひろに聞かれ、『わたしがちいさかったときに』の担当だった童心社の渡辺泰子さんは、「この作文を書いたどの子でもいいです。その子がまっすぐに読者のほうを見ている。そういう絵を描いてください。」と鉛筆だけの絵を依頼します。ちひろは、少女を描いては消し、消しては描き、あるときは全て消し、紙の表面がざらざらになるまで描き直したといいます。全ての輪郭線が描かれていないところに、この子のはかなさと強さが共に表されているようです。