[表紙の作品] いわさきちひろ 「麦わら帽子に蟹をのせた少年」1971年

小麦色に日焼けした男の子が、大きなつば広帽子をかぶっています。背景にはなにも描かれていませんが、小さな蟹が、広大な海原や砂浜を連想させます。帽子のつばの影には紫色が施され、日差しの強さを感じさせます。
帽子が好きだったちひろは、絵のなかの子どもたちにもさまざまな帽子をかぶせました。特に一九七〇年前後の後期の作品では、背景を省略したり、子どもたちの顔をアップでとらえたものが増えていき、帽子の役割がより大切になっていきました。帽子が絵に彩りを添え、場所や季節を想像させ、子どもの気持ちまでもを伝えています。