ちひろ没後40年記念講演 ちひろが今生きていたら ~長男・松本猛が語る母の素顔~

ちひろの思いが込められた絵本
「『戦火のなかの子どもたち』は22歳だった私も制作に関わった絵本。ベトナム戦争で犠牲になる子どもたちに胸を痛めていた母が、亡くなる1年前に病をおして完成させました。何度も描いては消すということを繰り返し生み出した作品は、ただ描くというだけでなく、戦争の犠牲になる子どもたちの悲しみや苦しみを画用紙に埋め込むという作業だったのかもしれません。母が自分の戦争体験を詳しく話すことはありませんでしたが、この絵本を一緒に制作することで、平和への思いを私に伝えたかったのではないかと感じます。」

今を生きる自分にできること
「特定秘密保護法が制定され、集団的自衛権の行使が容認される現在の日本。今すぐ私たちの生活に影響があるわけではないかもしれませんが、未来の子どもたちが再び戦争に巻き込まれる可能性がないとはいいきれません。そして、人間が普通に生活する権利を奪われた福島の原発事故。福島に出向いてその現状を目にしたとき、母ならどうしただろうと考えました。そのとき思い浮かんだのが『戦火のなかの子どもたち』です。もし母が今生きていたら、きっと絵本で自分の意志を表現することを選んでいただろうと思います。ちひろと同じ絵本作家という道を選んだ娘とふたりで『ふくしまからきたこ』という絵本をつくったのはそんな思いからでした。」「ちひろの絵の根底にある子どもたちへの愛情や平和への思いに共感する人たちに支えられ、没後40年経った今もちひろの絵は愛されているのだと、今強く思います。」(入口あゆみ)