谷内こうた展 風のゆくえ ②絵本との出会い

安曇野ちひろ美術館では現在、〈企画展〉谷内こうた展 風のゆくえを開催中です。 3回に分けて、谷内こうたの魅力をお伝えしていきます。

②谷内こうた 絵本との出会い

美術大学で油彩画を専攻したものの、大学紛争で大学に通うこともままならず、アルバイトや家業の染色工房の手伝いをしていた22歳のとき、谷内に転機が訪れます。

叔父で画家の谷内六郎のすすめで絵本の絵を描き、彼の紹介で、実験的な絵本づくりを行っていた至光社の編集者・武市八十雄(たけいち やそお)に見せることになったのです。

のちに、谷内はこう語っています。

「武市氏はじっと見てこの2つを絵本として出版しますというのでびっくり仰天しました。そのときにビネッテ・シュレーダーの本や、ちひろさんの『あめのひのおるすばん』を見せてくれました。それは私が思っていたいかにも子ども向けの世界とは全く違う発想でもっと自由な世界と知りました。」

 

谷内こうた『あのおとなんだ』(至光社)より 1971年(ちひろ美術館蔵)

展覧会では、デビュー作となった2つの絵本『おじいさんのばいおりん』『ぼくのでんしゃ』をはじめ、武市との出会いから間もなくして描かれた『なつのあさ』『あのおとなんだ』などの原画や資料をご覧いただけます。