[表紙の作品]いわさきちひろ 「ひなげしとおさげ髪の少女」1967年

大きなひなげしの花の間からこちらをまっすぐに見つめる少女。ひなげしは、正面を向いたり、横を向いたり、少し斜めを見上げたりしながら、少女を囲んでいます。1960年代半ば以降、ちひろはよく、実際の大きさとは異なるスケールで、花と子どもを描きました。現実にはない風景ですが、ゆるやかな曲線の茎と大きなひなげしの花が構図に変化をあたえ、違和感なく見せています。重なり合うと濃く鮮やかになり、日にかざすと淡く透ける花びらの繊細な質感を、ちひろは水彩絵の具のにじみと濃淡を使って描き出しました。