[表紙の作品]いわさきちひろ 山を想う少女『あかまんまとうげ』(童心社)より 1972

「すみれよ。いっぱいさいてて、むらさきのじゅうたんをひろげたようよ。」山に住むおばあさんに、ひみつを特別に教えてもらえると聞いた主人公のかずこは、お母さんが出産のために家を留守にする間、祖父母の家で過ごすことを決めます。少女が想像した山の景色を、ちひろは、すみれの色のグラデーションで表現しています。緑色が印象的な絵本『あかまんまとうげ』の絵のなかで、紫が主に使われているこの作品は、どこか幻想的で、目をひきます。町の暮らししか知らなかったかずこが体験する自然との出会いは、現代にも通じる物語です。