いわさきちひろ チューリップのなかのあかちゃん 1971年

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ちひろ・花に映るもの

「花と子どもの画家」ともいわれるいわさきちひろは、生涯にわたり、繰り返しこのテーマを描き続けました。ちひろにとって花は季節をあらわすとともに、子どもの心の機微や、限りあるいのちの美しさを象徴するモチーフであり、花を子どもの姿に重ねながら自由で大胆な構成で表現しました。本展では、花と子どもを描いた作品の表現の変遷を追いながら、そこに込められたちひろの思いを探ります。

 

花と子どもの画家といわれるちひろの絵には、たくさんの花々が登場します。自宅の庭で草花を育て、アトリエに鉢植えを飾るなど、四季折々の花に囲まれた暮らしを楽しむなかで、花と語らい、花を慈しむ時間は、創作の源泉となりました。

1950年代から60年代半ばまでのちひろの絵には、前景に花を配した作品が多くあります。「ままごと」では、水彩の濃淡でカーネーションの幾重にも重なり合う花弁を表現し
ています。

「ままごと」 1963年

1960年代半ばころから、より自由な発想で花を配した構図が登場します。「あやめと少女」では、少女のまわりに、装飾的にあやめの花の部分だけを描いています。みずみずしくしっとりとした質感のあやめは、少女の繊細な心情を想像させます。

あやめと少女 1967年

ベトナム戦争が激化していた1970年代、ちひろは自らの戦争体験を重ね、反戦の思いを込めて、『戦火のなかの子どもたち』を制作しました。戦火にさらされるベトナムの子どもたちの姿を描き出したこの絵本の冒頭には、「そのすきとおった花びらのなかから しんでいったその子たちの ひとみがささやく」という詩とともに、子どもたちの顔が浮かぶシクラメンの花を描いています。シクラメンはちひろの冬のアトリエを飾る花でした。その花を見つめながら、いのちを落としていったベトナムの子どもたちを悼み、思いを寄せていたことがわかります。

シクラメンの花のなかの子どもたち『戦火のなかの子どもたち』(岩崎書店)より 1973年