連続講座「赤羽末吉・絵本づくりの舞台裏」

6月5日は、「『かさじそう』『つるにょうぼう』―雪国を訪ねて―」。赤羽は最初の絵本『かさじぞう』を描く前から、繰り返し東北の雪国への旅にでかけていました。このときの写真やスケッチには市や子どもたちの遊びが文章を添えて克明に記録され、雪国の自然の美しさと同時に、民俗学的な興味にも駆られていたことがうかがえます。他にも職場か通勤電車のなかで『かさじぞう』の構想を練ったと思われる小さな手帳や、『つるにょうぼう』の束見本に描かれたダミー、和紙の使い方を自らの手でまとめた見本帳なども紹介しました。

6月19日は「『スーホの白い馬』―赤羽の見た中国の大地―」。この回は、1932年以後15年間を旧満州(中国東北部)で過ごした赤羽が、日本への引き揚げ時に持ち帰った資料の数々を紹介しました。新聞や雑誌に掲載された絵入りの記事の切り抜きや、郷土玩具を描き写した絵巻は、中国の伝統的な文化に魅せられていた若き日の姿を彷彿とさせます。モンゴル国境に近い内蒙古を旅したときの写真は、20年以上のときを経て、『スーホの白い馬』の絵本制作にいかされました。

7月3日の「『ほしになったりゅうのきば』―赤羽流!絵本づくりの奥義―」では、予定していた『ほしになったりゅうのきば』の制作過程の資料の紹介だけでなく、市村久子氏が絵本『おおきなおおきなおいも』誕生にまつわるエピソードも披露してくださいました。この絵本は、新宿の鶴巻幼稚園の先生だった市村氏の実践報告を、赤羽が聞いたことがきっかけとなって誕生しました。市村氏が持ってきてくださった、模造紙8枚にもなる子どもたちの特大のおいもの絵は、絵本のとおりの大迫力でした。

(上島史子)