展示作品より③ 絵本『にちようび』

10月1日は、谷内こうたさんの誕生日。
もし、生きていれば76歳です。そして、10月1日は、谷内こうた展 風のゆくえの最終日です。
最後に展示作品から、絵本『にちようび』(至光社)をご紹介します。

デビューの1969年から、ほぼ1年に1冊のペースで絵本を制作・出版していた谷内ですが、1987年から10年間、絵本のための絵を描いていません。後年のインタビューで、この時期「絵本を描こうという気持ちがあまり起らなかった」と語っており、「週刊新潮」の表紙絵(1992~1995)をはじめ、さまざまな雑誌の表紙、タブローを描くのに専念していた時期でした。

「にちようび よく はれた あさです」という文章で始まる場面には、テーブルの上に小さな小人のようなおもちゃが。同じ文章、フランス語版では、「にちようび 9時。まっている。」と少し異なります(フランス語版の絵本は、美術館の図書室で手に取ってご覧いただけます)。

谷内こうた 『にちようび』(至光社)より 1997年 ※この絵は展示されていません。

その後ことばはなく、絵だけのページが続きます。おもちゃの汽車が、乗客を乗せて進んでいきます。
コーヒーの香りがしてきそうな、朝の光に満ちた食卓の上を走る汽車は、この後どこへいくのでしょう。絵本、または展覧会会場でどうぞご覧ください。

谷内こうた 『にちようび』(至光社)より 1997年

谷内ならではの、現実と非現実がとなりあわせになった世界。
絵本のなかに描かれた絨毯は、谷内さんが旅先のギリシャで気に入って買って来たものだとか。机の上のエッグスタンドは、やはり谷内さんが蚤の市で買い求めて使っていたものだそうです。

展覧会をご覧になった方もならなかった方も、図録や絵本をとおして、谷内こうたの絵の数々を日々感じていただければ幸いです。(M.M.)

◆図録『谷内こうた 風のゆくえ』
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