絵本『ブルムカの日記』原画展 

絵本『ブルムカの日記』原画展にあわせて初来日した、ポーランドの絵本画家イヴォナ・フミェレフスカが、ギャラリートークとワークショップを行いました。

 ギャラリートークでは、フミェレフスカが絵本の一部を「コルチャック先生の母国語」であるポーランド語で読んだ後、制作背景について語りました。ポーランドでは児童文学者として最も名を知られるコルチャックですが、彼の語ったことを知る人はあまり多くないとのこと。最初は、コルチャック先生と孤児院の子どもたちのゲットーにおける最後の日々をテーマにと考えたものの、それよりも彼が生涯をかけて守り、伝えたかった、子どもたちの権利のことを中心に絵本をつくることにしたといいます。絵本の最後の見開きには勿忘草(わすれなぐさ)が貼られていますが、この花は、ポーランド語、ドイツ語、英語、日本語でも「私を忘れないで」という意味をもち、それがこの本が伝えたいことでもある、と語りました。展示室では、それぞれの場面の絵に込められた意味が、語られました。フミェレフスカは、この本に取り組んでいたときは始終、誰かに守られているような気がした、と涙ぐみ、彼女のこの絵本への想いの深さを感じさせました。

 午後のワークショップでは、『ブルムカの日記』を松川中学校の図書委員の生徒とフミェレフスカが交互に読んだ後、当時の孤児院の写真のスライドを見ました。そして、この絵本に登場する子どもたちが持ちえなかったもので、何を自分ならあげたいか、ということをコラージュで作るという課題で制作を行いました。12人の子どもたちの顔が描かれた紙を選んで切り抜いた後、用意されたさまざまな模様の紙で服やものをコラージュで描いていきます。最後に希望者は自作を発表しました。孤児院の子どもたちに犬をあげたいという人、幸せな将来をあげたいという人、着物をあげたいという人など、参加者の想像力あふれる作品を見た後フミェレフスカは、「この本に続編はないが、それは皆さんがそれぞれ作るのです。」と語りました。彼女の静かな語り口の中に、絵本制作への真摯な気持ちを実感した2日間でした。

フミェレフスカモノクロ左 のコピー.jpgのサムネール画像

(松方路子)