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【開館40周年記念 Ⅰ/日本デンマーク国交樹立150周年】<企画展>デンマークの心

イブ・スパング・オルセンの絵本

2017年の日本・デンマーク国交樹立150 周年を記念して、デンマークを代表する画家イブ・スパング・オルセンの展覧会を開催します。
オルセンの展覧会は、ちひろ美術館開館15周年(1992年)の「オルセンの描いたアンデルセン展」以来25年ぶりであり、まとまった数の原画をデンマークから借用して日本で展示するのは初めてのことです。

オルセンの故郷デンマークのコペンハーゲンでは、2015年11月から2016年1月まで「イブ・スパング・オルセン手の仕事、魂の仕事」展が開催され、2012年に亡くなった彼の仕事の全容を原画や資料から垣間見ることができました。
オルセンは児童書や小説のイラストレーションを中心に、生涯で600冊近い本に絵を描き、デンマークでは、誰もがオルセンの絵を使った本でABCを学んでいるといわれるほど身近な存在です。また、本の装丁やイラストレーション、アニメーションなど、グラフィックデザインの分野で幅広い活躍をし、ポスター・アーティストとしても知られています。

本展では、デンマークで展示されたもののなかから、12冊の絵本のための原画や資料などを紹介します

イブ・スパング・オルセン『つきのぼうや』(福音館書店)より1975年 ©Ib Spang Olsen by Medialynx Japan


オルセンとアンデルセン

デンマークといえば、アンデルセンの名前がまず挙げられますが、国際アンデルセン賞をデンマーク人として最初に受賞したのが、オルセンでした。1972年に51歳で画家賞を受賞した彼は、「アンデルセンの世界は、わたしにとっては宇宙と思えるほどに深く、広大な場所です。そこでは、人間の心の森羅万象が描かれ、ときには未来を予知しながらゆるがぬ真実が語られているのです。(中略)わたしはこれまで何度もアンデルセンの作品に立ち戻りながら歩いてきました。そしてその度に新たなものを発見して驚き、勇気づけられてきました。」*と語っています。
オルセンの描くアンデルセン童話やアンデルセン自伝は、決して華やかで色鮮やかな絵ではなく、独特の、震えるような線で描かれた人物の輪郭や影が、人間の心のひだまで表現しているようで、心をざわつかせます。
*『アンデルセンの童話3』(福音館書店)画家あとがき より

さまざまな技法

『アンデルセンの童話』のために描かれた作品では、半透明のフィルムに黒い線の部分のみが描かれ、もう一枚のフィルムには彩色がほどこされ、それらのフィルムを重ねて一枚の絵としています。オルセンの他の作品に見られる、亜鉛版術、ヘリオグラフィー(リトグラフの原則を用いたオフセット印刷の一種)などの技法には、印刷技術の変化と同時に彼のグラフィックアーティストとしてのこだわりが伺えます。また、絵本やイラストレーションにおいては、色よりも線の画家であることが感じられます。
多くの絵本原画には彩色がされていなかったり、カラーセパレーションで本を制作していたりするために、ペンや鉛筆で描かれたモノクロの原画が多く、一見すると地味に見えますが、重なる線の表現には、奥行きがあり、画家の筆致が伝わってきます。

イブ・スパング・オルセン『キオスクおばさんのひみつ』(文化出版局)より1979年 ©Ib Spang Olsen by Medialynx Japan
イブ・スパング・オルセン『はしれちいさいきかんしゃ』(福音館書店)より1993年 ©Ib Spang Olsen by Medialynx Japan

自作絵本の魅力

オルセンの作品の魅力はアンデルセンに留まりません。文章も絵も両方手掛けた30冊あまりの自作絵本には、オルセンの詩情やユーモア、そして読者である子どもへの深い理解や愛情が感じられます。10年間の教師の経験や、40歳を過ぎ父親となったことなどが、彼の絵本づくりにも反映されています。
オルセンの本領は、気取らない、日常的な人やものを描くときに発揮されるようです。その魅力は時代も国境も超え、届いてきます。

『かぜ』表紙(亜紀書房)2016年


イブ・スパング・オルセン  Ib Spang Olsen (1921-2012)

イブ・スパング・オルセン(1989年頃)Photo ©Tamotsu Hozumi

デンマークに生まれる。教職に就きながら、王立美術大学でグラフィックアートを学ぶ。子どもの本のイラストレーションのほか、アニメーションや陶器のデザインなど、活動の幅は広い。1972 年度国際アンデルセン賞画家賞、1976 年インダストリアル・グラフィックデザイン賞 などを受賞。絵本に『つきのぼうや』『はしれちいさいきかんしゃ』(福音館書店)『アンデルセンの自伝 わたしのちいさな物語』(あすなろ書房) 『かぜ』『あめ』(亜紀書房)『ぼくのあかいボール』(BL出版) 『ネコの住むまち』(メディアリンクス・ジャパン)など。