「ヒロシマ🍅トマト 司修展」学芸員のつぶやき③

現在開催中の「ヒロシマ🍅トマト 司修展」を、展示担当学芸員がご紹介します。

 1936625日、司修は群馬県の前橋に生まれました。母子家庭のために、子ども心に差別をいつも感じていたといいます。学校の授業でも先生に反発したりする少年でしたが、小学校3年の夏、前橋が空襲にあい、焼け野原となります。なにもかも無くなってしまったなかで竹を買い、家を建てます。自分の手で新たにものをつくるよろこびが、後の創作のよろこびにつながっていきます。司は生き方を模索するなかで知り合った画家の影響を受け、独学で17歳から油絵を描き始めます。

1959年、23歳のとき、司は絵描きになろうと、前橋から上京します。そこで展覧会などに足を運び、他の人の作品が自分より上手に見え、学ぶことも無意味に感じられて落ち込みます。しかし、自分の荷物にあった1冊の萩原朔太郎の詩集を読み、その詩に触発されるように絵を描き始めました。

1950年代、米ソの冷戦期に核実験が数多く行われるようになります。司は、放射能汚染の恐怖や、人間がモルモットにされてしまうことへの怒りをこめて、「モルモットの哀詩」を描きます。

モルモットの哀詩 1959年(個人蔵)

以後、司は広島や長崎を常に意識していたといい、それは作品にも見られます。

カプセルに包まれたドーム 2005年 個人蔵

今日625日で司は89歳になります。どのような作品がこれから生まれていくのでしょうか。

撮影:中島美江子

▽開催中の展覧会
2025年5月16日(金)~7月21日(月・祝)
ヒロシマ🍅トマト 司 修 展
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