魔法の絵本

ちひろ美術館・東京では、現在 ちひろ美術館コレクション 魔法の絵本=絵本の魔法 を開催中です。 [2026年5月15日(日)~7月20日(日)]

本展にあわせて、魔法が登場する絵本をご紹介します。

*印のついている絵本の原画が、上記展覧会に出展中です。

 

『魔術師の弟子』

バーバラ・ヘイズン・文 トミー・ウンゲラー・絵 たむらりゅういち/あそうくみ・翻訳
出版社:評論社
出版年:1977年

ドイツの文豪ゲーテが、「魔法使いの弟子」という詩を書いたのは1797年。魔法使いの師匠が留守になると、残された弟子が覚えたての呪文を使い、水、ほうき、バケツたちをあやつって家事をさせます。しかし止めるための呪文が分からず、危機一髪! というときに、師匠が帰宅して……という内容です。
この絵本の作者ヘイズンはゲーテの詩を更に膨らませ、魔術師の住む城や地下室、出かけた理由、弟子の性格などを詳しく書き表します。絵を手がけるのは、『すてきな三にんぐみ』で知られるウンゲラーです。得意なユーモアを加え、魔術師や弟子、いっしょに住むふくろうや黒猫、ヘビ、ぬいぐるみのワニなどを躍動感ある線と影のある色彩でさまざまなアングルから描きます。
まるでアクション映画のような1冊ですが、同じ詩を元に交響詩が作曲され、ディズニーはアニメーションを作成し、魔法と人間の愚かさはいつの時代も人気のテーマであることがうかがえます。

 

『魔術師キャッツ』*

T. S. エリオット・文 エロール・ル・カイン・絵 田村隆一・訳
出版社:ほるぷ出版
出版年:1991年

イギリスの詩人T. S. エリオットの詩集『キャッツ』より、「大魔術師ミストフェリーズ」と「マンゴとランプルの悪ガキコンビ」、ふたつのお話を収録しています。個性的な猫たちが登場する『キャッツ』は、ミュージカル作品としても世界中で知られています。
「大魔術師ミストフェリーズ」は、超一流の奇術使い、神出鬼没で、神秘の黒猫、ミスター・ミストフェリーズについて語られます。耳の先からしっぽの裏までまっ黒なミストフェリーズは、「ミャミャーン、クルリン!」と、シルクハットから鳩を出し、手品、軽業もお手のもの。人々は、目にもとまらぬ早わざに、「なんてすごい猫なんだ! 不思議なミスター・ミストフェリーズ!」と感嘆の声をあげるばかりです。ル・カインは、この魔法使いのような不思議な猫に、黒光りする大きなシルクハット、夜空を模したすばらしく豪華なマント、トランプの首飾り、銀のステッキを持たせています。
「マンゴとランプルの悪ガキコンビ」は、盗みやいたずらが得意なふたり組で、毛足の長い灰色のとら猫です。ずる賢く油断のならない表情をしていますが、どこか憎めない愛嬌も感じさせます。
猫は、古くから魔女や魔法使いのお使いとして語られる神秘的な存在でありながら、そのかわいらしさは人々を引きつけてやみません。ル・カインは、魅力あふれる猫たちとともに、19世紀イギリスのヴィクトリア様式の家の内装や人々のようす、実在するビクトリア・グローブ通りの家々を、緻密で繊細に、かつデザイン的に美しく描き出しています。ル・カインは1989年に亡くなり、本作が遺作となりました。

 

『まねっこねこちゃん』*

長新太・作/絵
出版社:文溪堂
出版年:2003年

「まねっこねこちゃん まほうつかい」のくり返しとともに、さまざまな姿に変身するねこちゃん。お花や車、すべりだい、きょうりゅうにだってなってしまいます! ねこの面影が残る変身後の姿には、どこか愛嬌があり、思わず頬がゆるみます。まねっこすると疲れてしまうのか、ねこちゃんは何度か変身すると、必ず「ちょっと ひとやすみ」するようです。行く先々で姿を変えて、一体どこへ行くのでしょうか?
歌のようにくり返されることばと、ページをめくるたびに変化する形が、絵本のなかに心地よいリズムを生み出しています。絵の細部に注目すると、魚が枕がわりに使われていたり、ねこちゃんの手ではなく耳がザリガニのはさみになっていたり、クスッと笑える意外な組み合わせに、作者の遊び心が感じられます。鮮やかで大胆な色づかいと、少しとぼけたような表情の描写も魅力的です。数多くのナンセンス絵本を手がけた作者・長新太ならではの、独特のユーモアが楽しめる一冊です。

 

  • 『アラジンと魔法のランプ』* アンドルー・ラング・再話 エロール・ル・カイン・絵 中川千尋・訳 ほるぷ出版 2000年
  • 『こびとのくつや』* グリム・作 バーナデット・ワッツ・絵 ささきたづこ・訳 西村書店 1987年
  • 『マーシャと白い鳥』* ミハイル・ブラートフ・再話 出久根育・文/絵 偕成社 2005年
  • 『だいくとおにろく』 松居直・再話 赤羽末吉・絵 福音館書店 1967年 *ピエゾグラフ作品を展示中
  • 『ふしぎなかず』* クヴィエタ・パツォウスカー・作 ほるぷ出版 1991年
  • 『もしもまほうがつかえたら』 ロバート・グレイブス・作 モーリス・センダック・絵 原もと子・訳 冨山房 1984年
  • 『魔法使いのABC』 安野光雅/安野雅一郎・作 童話屋 1980年