ホジェル・メロ ギャラリートーク&ワークショップ

 

安曇野ちひろ美術館で開催中の企画展「ブラジルからやってきた!色彩の画家 ホジェル・メロ展」にあわせ、ブラジルから初めて長野県にホジェル・メロがやってきました。

 

メロは、既にいわさきちひろをブラジルにいる時から知っており、「大好きな画家であるちひろの美術館で自分の展示が開かれることは本当に嬉しい」、と語りました。展示替え初日に美術館に到着し、以前からアイディアをあたためていたインスタレーションを2日間かけて、制作しました。「赤い庭」と題されたこの不思議な庭は、複数の鉄の棒と、その上につけられた、球や立方体、ティーカップや、ブラジルの生き物、メロが作り上げた架空の乗り物によって構成されています。メロと友人、地元松川村の木工作家をはじめ、美術館スタッフらが協力して完成しました。その赤い色は、日本の神社の鳥居を見て印象に残った色だといい、この庭の中に人々が入り込み、物語の主人公になることができる、と語りました。

 

ホジェルメロイベント報告.JPG17日午前中のギャラリートークでは、はるばるブラジルから駆け付けたメロのお兄さんを含む聴衆の前で、作品をそれぞれ丁寧に解説しました。ブラジルの伝統や祭を扱った絵本では、子どもたちに、絵本を通じて失われつつある伝統を知り体験してほしいと述べ、また、『マングローブの子どもたち』は、ゴミ問題を含め、貧しさのなかで働く子どもたちのありのままの生活を、実態として伝えたかったと語りました。女性詩人の詩に絵を加えた『庭園』では、彼の故郷の近くのセハードという半乾燥地帯に実際に生えている花も架空の花も描かれていることを示し、外に作られた「赤い庭」も、また一風かわった庭園のひとつである、と紹介しました。

 

「子どもの本は、子どもの目から何かを隠すのではなく、あらゆることを伝えるのが大事なのです。そして、それにより、ふたつのとても大切なこと、つまり、勇気と神秘を子どもに与えることができます。」としめくくられました。

 

午後のワークショップ「ブラジルへの手紙」は、メロ初めての試み。参加者はブラジルに住む想像上の子どもに宛てた手紙を書き、書き終えた手紙を封筒に入れ、自分の名前を書いて郵便袋に投函。その後、参加者は袋から別の人が書いた封筒を選び、開封して手紙を読みます。読んで感じたことを今度は絵葉書として表現し、最後には、手紙を受け取った人が、絵を見せながら、手紙を皆に読んで聞かせる、という発表が行われました。メロは、「本を書くとき、つくり手は架空の登場人物に宛てた手紙を書くことがあります。そのことで、登場人物を、より深く知ることができるのです」と語り、ワークショップが絵本づくりのプロセスにも関連していることを明かしました。ブヤタマさんTシャツを着て笑顔を絶やさない気さくな人柄に、皆メロメロの一日でした。

(松方路子)