【学芸員がじっくりご紹介!展覧会「ちひろ美術館コレクション もようをみよう」みどころ②】

ちひろ美術館では、すぐれた子どもの本のイラストレーションを貴重な文化財のひとつと位置づけ、世界35の国と地域の228名のアーティストによる約28,000点を収蔵しています。

絵のなかには生き物の体や主人公の衣装、絵を飾る装飾など、さまざまなところに模様が描かれています。
今回の「ちひろ美術館コレクション もようをみよう」 は模様に注目して作品を選びました。
展示作品のなかから、作品をご紹介します。

ウェン・シュウ(コスタリカ) 『ナディとシャオラン』より1986年

こちらは、コスタリカの画家ウェン・シュウの『ナディとシャオラン』の作品。
ウェン・シュウは台湾で生まれ、2歳からコスタリカで育ちました。『ナディとシャオラン』はパナマの先住民族クナ族と中国から移民してきた女の子どうしの交流を描いた物語で、作者のルーツと重なります。女の子たちがおばあさんからお話を聞くこの場面には、ナマケモノやヘビ、鳥などのたくさんの動物が描かれ、コスタリカの豊かな自然環境がうかがえます。

色鮮やかな画面は、パナマの少数民族の伝統手芸「モラ」と中国伝統の切り絵(剪紙)の手法を組み合わせてつくられています。動物たちにもそれぞれ、切り抜きで美しい模様が描かれています。森の動物たちのざわめきが感じられる、楽しい作品です。

こちらの作品は、展示室3でご覧いただけます。原画ならではの美しさをお楽しみください。