トットちゃん広場10周年記念展「みんな、いっしょだよ。」 学芸員のみどころ①
現在、安曇野ちひろ美術館ではトットちゃん広場10周年記念展「みんな、いっしょだよ。」を開催しています。担当学芸員が展示の見どころをご紹介します。
『窓ぎわのトットちゃん』(講談社)は、ちひろ美術館館長・黒柳徹子の自伝的物語です。トットちゃんこと、黒柳が通ったトモエ学園は、戦時下であっても、校長の小林宗作先生のもと、ひとりひとりの個性と可能性を大切にする教育が行われていました。この物語は20以上の言語に翻訳され、刊行45周年を迎える今なお、世代も国境も超えたロングセラーとして愛されています。
本展では、安曇野ちひろ公園(松川村営)にあるトットちゃん広場オープン10周年を記念して、黒柳がつづるトモエ学園の日々と、いわさきちひろの絵が織りなすトットちゃんの世界の魅力を紹介するとともに、小林宗作先生が子どもたちに伝えた、「みんな、いっしょだよ。」の精神を見つめ直します。
ちひろの絵で知られるこの物語は、ちひろの没後に書かれましたが、遺された絵のなかから、黒柳自らがトットちゃんや友だちの姿に重なる作品を選びました。

いわさきちひろ こげ茶色の帽子の少女 1970年代前半
この《こげ茶色の帽子の少女》という作品をご覧になった方は多いのではないでしょうか。『窓ぎわのトットちゃん』の単行本表紙としてよく知られている作品です。
こげ茶色の帽子に、襟つきのオーバーコート、手袋とストラップシューズを身に着けた少女が描かれています。
よく見てみると、わずかな部分にのみ彩色が施されています。
やさしい色のリボンがついたこの帽子と靴は、同じ茶色でコーディネートされています。手袋は母親が編んでくれたものでしょうか。ワインレッドのおしゃれな色をしています。
こうして想像を膨らませてみると、この少女がよそゆきのおしゃれな恰好を披露するように、膝頭を合わせて足を斜めにした大人びた姿勢で、こちらに目線をむけて座っているのが分かります。
黒柳がこの絵を気に入って、雑誌連載の1回目や単行本の表紙に選んだのは、おしゃれをして少し緊張も感じられるこの少女に、新しい学校へはじめて向かう幼い日の自身の姿を重ね合わせたからだといいます。
本展では、『窓ぎわのトットちゃん』の雑誌連載や単行本、絵本に使われたちひろの作品を紹介しています。水彩のにじみやパステルなどを使って描かれたちひろの作品を、トットちゃんの世界と合わせてご覧ください。
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