夏展チラシ(表面)

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ようこそ! ザ・キャビンカンパニー新収蔵作品展
-がっこうにまにあわない・ゆうやけにとけていく-

美術館だより

阿部健太朗(1989-) と吉岡紗希(1988-)による二人組の絵本作家、美術家「ザ・キャビンカンパニー」。大分県由布市の廃校になった小学校をアトリエにして、絵本・立体造形・アニメーションなどさまざまな作品を生み出し、国内外で発表しています。
本展では、新規収蔵作品となる絵本『がっこうにまにあわない』(あかね書房 2022年)、『ゆうやけにとけていく』(小学館 2023年)の全原画38点を展示します。
彼らが描き出す豊かなイマジネーションと、画面に満ちあふれるエネルギーをお楽しみください。

朝を駆け抜ける絵本 『がっこうにまにあわない』

ザ・キャビンカンパニー 『がっこうにまにあわない』(あかね書房) 表紙 2022年

図1  ザ・キャビンカンパニー『がっこうにまにあわない』
(あかね書房)表紙 2022年

『がっこうにまにあわない』(図1)は、遅刻してしまいそうな男の子が、いつもの通学路でふりかかるトラブルに負けず、学校を目指す姿を描いた絵本です。今日は絶対に間にあわないといけない日。男の子は、13分間、必死で走り続けます。そのわけは金環日食。校庭を埋めつくす生徒たちに追いつき、急いでいたことも忘れて、いっしょに空を見あげます。

「自分たちが芸術や文学、自然の景色を見たときって時間を忘れると思うんですよね。あの時間がすごくいいなって思って」。
時間という概念をこれから学んでいく子どもや、時間に追われている大人の毎日を応援しつつ、時間を忘れてなにかに夢中になれることも大事にしてもらいたいという思いが込められています。

本作では、黄色や淡いピンクで描かれた空に、白い輪で金環日食が表現されました。本来、金環日食では空が暗くなりますが、「この子の心情は絶対暗くしちゃいけないから」と、子どもの心情を映しだす色選びがなされています。(図2)

図2  ザ・キャビンカンパニー『がっこうにまにあわない』 (あかね書房)より 2022年

図2  ザ・キャビンカンパニー『がっこうにまにあわない』
(あかね書房)より 2022年

また、この絵本には、私たちがよく知っている絵やことばが隠れています。『走れメロス』や宇宙船アポロ。散りばめられたモチーフによって、読者がイメージを膨らますことができるのも魅力のひとつです。

暮れる夕日に人生を重ねる絵本 『ゆうやけにとけていく』

『ゆうやけにとけていく』(図3)は、人の一生にやさしく寄り添える絵本を描きたいという思いから、夕焼けをテーマにした絵本として制作されました。「この絵本は、一日の日が沈むまでの時間も表しているし、春夏秋冬の季節の移り変わりも表している。最初のページではお母さんのお腹のなかにあかちゃんがいるんですね。最後のページにはおじいさんたちがいて、人間の一生も表したかったんです。」

本作では、色味と位置を変えながら、すべてのページに太陽が描かれています。太陽には鉛筆でうすく表情が描かれていて、親子の帰り道ではやさしい顔で見守り、怒って小石をける女の子の場面(図4)ではふくれっつらをするなど、登場人物の気持ちを反映しています。

図4   ザ・キャビンカンパニー『ゆうやけにとけていく』 (小学館)より   2023年

図4 ザ・キャビンカンパニー『ゆうやけにとけていく』(小学館)より 2023年

また、作中で女の子が畳に寝ころがりながら広げている本には、吉野弘の『熟れる一日』がコラージュで登場しています(図5,6)。他にも過去の文献の引用が見られ、作家たちが夕焼けをどのようなことばで表現したかを伝えています。

図5  ザ・キャビンカンパニー『ゆうやけにとけていく』 (小学館)より 2023年

図5  ザ・キャビンカンパニー『ゆうやけにとけていく』(小学館)より 2023年

図6  ザ・キャビンカンパニー『ゆうやけにとけていく』 (小学館)より(部分) 2023年

図6  ザ・キャビンカンパニー『ゆうやけにとけていく』(小学館)より(部分) 2023年

「ただ本を読んでるとか、お風呂に入ってるとか、帰り道とか、この絵本はなにも起きないんですよ。でも、なにも起きない、今の一瞬の日常を一番美しく描こうと思って。」異なる時間が流れながらも、日常に寄り添う2冊の絵本をお楽しみください。

ザ・キャビンカンパニー

ザ・キャビンカンパニー

阿部健太朗(1989-)と吉岡紗希(1988-)による二人組の絵本作家、美術家。ともに大分県に生まれる。大分県由布市の廃校をアトリエにして、絵本・立体造形・アニメーションなどさまざまな作品を生み出し、国内外で発表している。『がっこうにまにあわない』で2023年日本絵本賞、『ゆうやけにとけていく』で2024年日本絵本賞大賞、小学館児童出版文化賞等受賞多数。