ラチョフ展の見どころ紹介② ラチョフの動物民話:装う動物たち

ちひろ美術館・東京で開催中の企画展「生誕120年『てぶくろ』の画家ラチョフと民話絵本の世界」について、展示担当学芸員が、その見どころを全6回で紹介します。

第2回
ラチョフの動物民話:装う動物たち

絵本『てぶくろ』をはじめ、ラチョフの動物民話の大きな特徴は、動物たちが民族衣装を着ていることでしょう。
当初、ラチョフは動物画家として、もちろん洋服を着ていない、リアルな動物を描いていました。しかし、第二次世界大戦後、初めて動物民話の依頼を受けたとき、今までとは違う描き方をする必要があると強く感じたといいます。動物民話は、森に棲む実際の動物について語っているのではなく、人間関係や、人間の性格を暗示した寓話なのだと考え、このことを表現するために、動物たちにその地域の民族衣装を着せることを思いついたのでした。

展示作品から、ロシア民話「きつねとツル」を見てみましょう。

エフゲーニー・ラチョフ ロシア民話「きつねとツル」 1967年

きつねは、ロシアの女性が身につける頭飾り《ココシニク》、それと同系色のジャンパースカート《サラファン》に、白いブラウスを着ています。ツルは、首元にボタンが付いた上着《ルバーシカ》を着て、外套を腰ひもで結ぶ男性の装いで描かれています。

絵本『てぶくろ』に登場する、「おしゃれぎつね」も見てみましょう。

エフゲーニー・ラチョフ 『てぶくろ』(福音館書店)より(部分) 1950年

きつねが着ている、袖に赤い刺繍が施された白いワンピース《ヴィシバンカ》は、ウクライナの民族衣装です。パッチワーク模様の巻きスカートに、刺繍の入ったエプロンを重ね、まさに「おしゃれぎつね」にふさわしい装いです。ロシア語版の原書『РУКАВИЧКА(てぶくろ)』では、лисичка-сестричка:姉さんぎつね と直訳できるところですが、内田莉莎子さんの名訳が光ります。

▽開催中の展覧会 3月1日(日)~5月10日(日)
生誕120年『てぶくろ』の画家ラチョフと民話絵本の世界
ちひろ いつもとなりに―子どもと動物―