ちひろ展紹介② 動物の表現

ちひろ美術館・東京で開催中の展覧会「ちひろ いつもとなりに―子どもと動物―」について、展示担当学芸員が、その見どころをご紹介します。

第2回
動物の表現①さまざまな水彩技法

動物を描く際、ちひろはスケッチをすることもあれば、写真資料を参考にすることもあったようで、アトリエには図鑑や、写真のスクラップが入った封筒が残されています。
動物それぞれの特徴をじっくり観察し、それを絵に落としこむために、ちひろはさまざまな工夫をこらしました。今回は、ちひろが動物を描く際に用いた技法に注目します。

 

白抜き

いわさきちひろ やぎと男の子 1969年

いわさきちひろ はたを織る鶴 『つるのおんがえし』(偕成社)より 1966年

にじんだ色彩のなかに、動物のシルエットが白く浮かびあがるように描かれています。白抜きと呼ばれるこの技法は、ちひろの水彩画に多く見られる表現です。
白く残された紙の地から、羽根や毛の白さが伝わってきます。輪郭をふちどるようににじませた色彩が、動物のフォルムの美しさを際立たせていますね。

 

平面的にとらえる

いわさきちひろ くじゃくと少女 1966年

ちひろは制作物の形態にあわせ、モチーフをデザイン的に処理して描くこともあったようです。
例えば《くじゃくと少女》では、くじゃくが羽を大きく広げた姿が、平面的に表現されています。レコードのために描かれたこの絵は、レコードジャケットと、シングル盤のレコードそのものにも印刷されました。丸いレコードの形と、それが回って色彩が混ざり合うことも考慮しながら制作したものと思われます。

 

にじみで表現した小鳥たち

いわさきちひろ 小鳥とあかちゃん 1971年

いわさきちひろ 赤い小鳥 1971年

いわさきちひろ 赤い小鳥 1971年

ちひろが1970年代に描いた小鳥の絵に注目すると、細部を描写するのではなく、鮮やかな水彩のにじみによって、小鳥の動きや表情をとらえていることがわかります。文学全集の挿絵や広告ポスターのために描かれた小鳥のカットには、小さなサイズの作品が多く見られます。わずか3cmほどの小さな絵でも、小鳥の愛らしさがしっかりと伝わってくる点に、ちひろの画力の高さが感じられます。
展示室4では、ちひろが描いた小鳥の絵を多数展示しております。ぜひ、1点1点を見比べながら、ちひろが描いた小鳥たちの世界をお楽しみいただければ幸いです。

(次回へ続く)

▽開催中の展覧会:2026年3月1日(日)~ 5月10日(日)
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ちひろ いつもとなりに―子どもと動物―