ちひろの花鳥風月

立秋を過ぎ、暑さのなかにも秋の気配を感じるようになりました。いわさきちひろは、移ろう季節をみずみずしい感性でとらえ、絵筆を通して表現しました。

いわさきちひろ ききょうと子どもたち 1967年

この作品の桔梗は、葉や茎を省略し、花だけがさまざまな角度から描かれ、大胆なクローズアップが装飾的な画面を構成することで桔梗の美しさを際立たせています。輪郭線を用いずに絵の具の濃淡だけであらわす「没骨法(もっこつほう)」や、濃さの違う色や別の色をにじませる「たらし込み」など、いずれも俵屋宗達など琳派の画家が好んだ技法が用いられています。

また、桔梗と子どもの大きさを自由に組み合わせる構図の表現はちひろ独特のもので、こちらをのぞく子どもたちの表情からは、ちひろの子どもへの深いいつくしみが伝わってきます。ちひろは、より豊かに表現するために、生涯にわたり自身の技術を磨き続けました。

ちひろ美術館・東京で開催中の展覧会では、ちひろと日本の伝統的な美術との接点を見ることができます。

◆ちひろの花鳥風月
2021年9月26日(日)まで
同時開催:
生誕111年 赤羽末吉展 日本美術へのとびら 

(K.R.)