アトリエ散歩②

1930年代、池袋の西、椎名町、東長崎、要町を中心にアトリエ付き借家群が形成され、また芸術家のアトリエも点在し、松本竣介、熊谷守一、丸木位里、赤松俊子(丸木俊)ほか数多くの芸術家たちが暮らしていました。貧しさのなかで創作に励み、芸術談義がさかんに交わされた雰囲気を詩人の小熊秀雄が「池袋モンパルナス」と呼びました。
また、現在の練馬駅の南にもアトリエ群があり、佐藤忠良や舟越保武らが暮らしました。練馬アトリエ村と池袋モンパルナスとは距離的にも近いため、住人たちは互いに行き来をしたといいます。熱気に満ちたこれらの芸術村は、第二次世界大戦が始まると招集や空襲などによってしだいに衰退していきます。

敗戦の翌年1946年、いわさきちひろは画家になる決意のもと疎開先の信州から上京、神田に暮し、新聞記者として働きながら夜は芸術学校に通いました。そして、やはり疎開先から芸術村に戻っていた丸木夫妻のアトリエでの早朝デッサン会に参加しています。

現在は跡地を示すプレートなどのほかに当時の名残はほとんどありませんが、ちひろ美術館・東京へお越しの折には、かつて芸術家たちが集い、人生を交差させた地へ足をのばしてみませんか?(K.R.)

◆ちひろ美術館・東京 開催中の展覧会(2023年1月15日(日)まで)
くらし、えがく。ちひろのアトリエ
くらしと仕事の両方を大切にしながら人生を切り拓いたちひろの生き方を、アトリエを軸にたどる展覧会です。作品とあわせてちひろ自身のことば、写真や資料などを紹介しています。

◆ちひろ美術館・東京 アクセス
西武新宿線上井草駅下車徒歩7分
西武池袋線石神井公園駅より西武バス荻窪駅行き(荻14)「上井草駅入口」下車徒歩5分
JR中央線荻窪駅より西武バス石神井公園駅行き(荻14)「上井草駅入口」下車徒歩5分