【イベント報告】あかちゃん/子どものための鑑賞会

「石内都展 都とちひろ ふたりの女の物語」開催中の2019年11月4日(月・祝振休)および2020年1月13日(月・祝)に、「あかちゃん/子どものための鑑賞会」を開催しました。

講師は、「NPO法人赤ちゃんからのアートフレンドシップ協会」代表理事の冨田めぐみさん。冨田さんは、子どもの育ちと子育てをする人を応援したい、と、乳幼児の家族鑑賞会を各地で開催され、現在まで延べ約2000組4000人以上のご家族と関わってこられています。

鑑賞会では、初めに、あかちゃんや幼い子どもたちと展覧会を楽しむための心構えをお話ししてから、展示室へ。


鑑賞の主役は、あかちゃんと子どもたち。
あかちゃんが絵を見やすいように抱っこで鑑賞します。
抱っこを卒業したお子さんも、作品によっては、抱き上げて大人の目線の高さで見られるようにすると、作品がよく見えて、興味を示しやすくなるそうです。

ことばが話せないあかちゃんでも、指さししたり、「見て」というように大人の方に顔を向けたり。
興味のあるとき、ないときで、絵に対してもはっきり反応が異なることも分かります。

ちょうど眠ってしまったあかちゃんの保護者には、「大人がゆっくり鑑賞できるチャンスですよ」と冨田さん。
それぞれのご家族のペースで、お子さんが興味を持った作品に着目しながら鑑賞し、保護者は、展示室でのお子さんのようすを記録していきます。

ひとりで歩いて、おしゃべりもできる3~5歳の子どもたちとの鑑賞の時間には、気に入った作品について、展示室で子どもたち自身に発表してもらう時間も設けました。

鑑賞の後で、保護者の方が、お子さんが興味を持った作品を順に発表していきます。
「少女の顔」(絵・いわさきちひろ)に興味を持った1歳1か月のFちゃん。
「人の顔に興味を持つ時期なので、作品のなかでも顔が描かれているものに反応するのね」と冨田さん。
石内都さんの写真chihiro.1974シリーズのなかで、宝石のように散らばるボタンが気に入ったKちゃんには、「0・1・2歳のお子さんたちは、光っているものに興味を持つ子が多いですよ」。

月齢や年齢によっても、もちろん子ども自身の経験や興味によっても、対象との向き合い方が違うということを、それぞれの家族が実感しました。

大人でも、美術作品の「鑑賞」なんて難しそう、と思っていませんか。
子どもたちが興味を持つものをさがすような気持ちで、美術館を訪れてみてはいかがでしょう。

美術作品に限らず、美術館周囲の木々や建物の材質、照明器具でさえ、子どもたちにとっては興味の対象です。美術館という空間のなかで、今まで注目しなかったようなわが子の新しい一面に出会えるかもしれません。

「美術館に来たのだから絵を見なくては」という義務感を持たずに、ゆったりと美術館という空間を楽しんでみてはいかがでしょうか。お話しできる年齢のお子さんとは、ぜひ会話をしながら作品を見てみてくださいね。

大人にも子どもにも、思い出に残るひとときになればうれしく思います。

*当事業は、「練馬発!みんなのミュージアム事業」として、「平成31年度地域と共働した博物館創造活動支援事業」の助成を受けて開催いたしました。