展覧会紹介「ちひろ美術館コレクション 江戸からいまへ 日本の絵本展」

ちひろ美術館・東京の展示室1・2では、
ちひろ美術館コレクション 江戸からいまへ 日本の絵本展」を開催中です。

長く戦乱のなかった江戸時代には、江戸や上方の町民を中心に、新しい文化が花開きました。伝統的な手描きの本や絵画は限られた人しか手にすることはできませんでしたが、江戸時代には版を用いた印刷技術が進歩して、浮世絵師たちの手がける絵入り本の「草双紙」や「錦絵」が盛んに出版されるようになりました。

赤本『さるかに合戦』西村重長・画 1716-1736年(享保)頃(復刻1926年)

草双紙の先駆けとして登場した「赤本」には、古くから語り継がれてきた昔話が描かれました。これは赤本の「さるかに合戦」で、蟹を痛めつけた猿を退治するために、蜂や蛇、杵や臼、包丁やたまごが集まって作戦を練っています。登場人物たちの会話が絵の周りに書かれていて、漫画のようですね。

落合芳幾 「猿蟹敵討之図」 1860年(万延元年)

一方こちらは、江戸時代末期、多色摺りの大判3枚続きの「錦絵」に落合芳幾が描いた「猿蟹敵討之図」です。動物たちは華やかな衣装で登場し、歌舞伎役者のように見得やとんぼを切っています。

ほかにも「桃太郎」「舌切雀」「かちかちやま」などの昔話を描いた、江戸時代から現代までの絵本も紹介しています。昔も今も、昔話は画家たちにインスピレーションを与え、さまざまに描かれてきました。ぜひ見比べてみてください。
(F.U.)