結婚指輪

トラフ建築設計事務所の鈴野さんが、ちひろ美術館・東京で行った講演会*のなかで、結婚指輪の製作を依頼されたときのお話がありました。

結婚指輪は、指輪のなかでも長い間身につけることが多いものです。そのため「建築と同じように時間をテーマにしていこう」、「ふたりの共有した時間を可視化するよう」10年20年身につけることでシルバーからゴールドになっていく素材を選び、そのうえでプロダクツ(大量生産品)として制作をされたのだそうです。

建築もインテリアも、そして人も時を経ることで豊かになるということ、そうした考え方が反映されています。

偶然にも、いわさきちひろの結婚指輪も月日を経て色が変化しました。

ちひろは『わたしのえほん』(新日本出版社 1978年)のなかで、「それから十年くらいたったある日、指輪の色の変化に気づきました。ももいろが少しくすんでベージュがかり、年齢にあったそれは味わい深い色になりました。(中略)私の年にふさわしく、肉体の一部のように静かに指におさまっています。」と語っています。

*「トラフによるアーティストトーク」(8月3日開催)については、ちひろ美術館・東京のブログをご覧ください。

◆書籍 トラフ建築設計事務所『インサイド・アウト』(TOTO出版 2016年)に、トラフさんの結婚指輪のことも詳しく記載されています。

「ちひろさんの子どもたち」谷川俊太郎×トラフ建築設計事務所 は、10月27日(日)まで開催しています。

いわさきちひろ 指輪をはめた手 『わたしのえほん』(新日本出版社) より 1968年

(K.R.)