田島征三 『ふきまんぶく』(偕成社)より 1974年
今年4月半ば、臨時休館に伴い終了した「田島征三展『ふきまんぶく』―それから、そして、今-」。ぜひ展覧会を見たいという声にこたえ、田島の「これから」の視点を加えて再開します。
『ふきまんぶく』ふたたび
絵本『ふきまんぶく』は、それまでは男性的なイメージの強い作品が多かった田島としてはめずらしく少女を主人公とした絵本です。そこには、次に生まれてくる長女への想いもあったといいます。土のなかで眠るふきちゃんは、母親の胎内で生まれるのを待つ子どもの姿と重なり、人間も植物も共にもつ生命の神秘を表現しているようです。
田島はこの絵本のための絵を描き終え、出版を待つだけのとき、再度全ての場面を1年かけて描きなおしました。先に描いた作品からは、同じ場面でもさまざまな構想があったことが伺えます。本展では、その習作も原画とともにご紹介します。
最近の作品から
絵本に限らず幅広い創作活動を行っている田島の近年の作品から1点を紹介しましょう。2019年に描かれた、タブロー作品「嵐のなかを行く母と姉弟」です。田島はドイツの画家ケーテ・コルヴィッツの、母子を描いた作品へのオマージュのつもりだったと語っています。風や雨に向かって子を守りながら進む母には人間を超えた力強さが感じられ、その気迫に圧倒されます。
これから
過去の作品よりも、最新の作品を見てほしいと語る田島。春の展覧会では彼の「今」に注目しましたが、秋の展示では、さらに7月に出版された『つかまえた』につづく『うめ木さん』の試作など、田島の「これから」も紹介します。
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