ちひろ美術館コレクション画家の絵本

わにくん
『わにくん』
ペーター・ニクル・作 ビネッテ・シュレーダー・絵 やがわすみこ・訳

出版社:偕成社
出版年:1980年

皆さんは、どうしてナイル川の近くにおしゃれなワニが多いか知っていますか?
昔、スフィンクスのそばの観光客から、ヨーロッパにはワニの店があると聞いたワニ。川を超え、海を越え、汽車に乗ってパリへたどり着きます。うわさに聞いたシャンゼリゼ通りのその店に入ったとたん、ああ無情。そこは、ワニのための店ではなく、ワニ皮でできたものを売る店だったのです。怒ったワニは、店の売り子さんを飲み込み・・・。
はるかな地平線まで奥行きのある幻想的なその絵は、シュルレアリストたちの作品に通じるものがあります。表紙の枠に手をかけ、キセルをふかしながらこちらを向く「わにくん」の粋な姿に読者はドキッとすることでしょう。


おかあさんとわるいきつね
『おかあさんとわるいきつね』
イチンノロブ・ガンバートル・文 ボロルマー・バーサンスレン・絵 つだのりこ・訳

出版社:福音館書店
出版年:2011年

母国モンゴルに伝わるお話を、絵本画家ボロルマー・バーサンスレンが描き、夫のガンバートルが文を書いた一冊。モンゴルの北部、深い森が広がるなか、トナカイを飼って暮らす人たちがいました。近くには人間のあかちゃんを狙う、キツネたちが住んでいました。母親があかちゃんを離れてトナカイの乳搾りに出かけた隙を、キツネは狙います。母親も様々な知恵をしぼり出し、あかちゃんを守りますが、ある時、とうとうあかちゃんが、キツネにさらわれてしまいます。主人公たちの姿は、厳しい自然の中でたくましく生きる人間の本質を伝えるようです。まあるい顔の、強いお母さんとかわいいあかちゃんが大層表情豊かに描かれ、何度でも読みたくなる絵本です。


百年の家
『百年の家』
J・パトリック・ルイス・作 ロベルト・イノチェンティ・絵 長田弘・訳

出版:講談社
出版年:2010年

1900年、「ずっと廃屋だったわたしを、やっと見つけてくれたのは、子どもたちだった。」と家が、自らの歴史を語りはじめます。100年の家の歴史を、定点観測による同じ構図でイノチェンティが緻密に描きました。100年の間には、いのちの誕生、死があり、木が育ち、朽ち果ててゆきます。そして、2度の世界大戦の記憶。決して広くはないその場所にも、歳月は確実に流れ、世の中の歴史が同じように訪れ、変化していくことを私たちに教えてくれます。イノチェンティの『白バラはどこに』を訳した詩人長田弘が、本書も訳を手がけました。ずしりとした石の重みが感じられるような文章も長田ならではで味わい深いです。


ひみつだから
『ひみつだから』
ジョン・バーニンガム・文/絵 福本友美子・訳

出版社:岩崎書店
出版年:2010年

マリー・エレインのうちのネコのマルコムは、毎晩外にでかけ、朝になると帰ってきます。パーティに行くらしいのですが、「ひみつだから」と行き先は教えてくれません。そこで、マリー・エレインは、パーティに行く格好をして、マルコムと一緒にでかけるにします。幼い友だちノーマン・コワルスキも合流し、途中でイヌにおいかけられつつも、なんとかたどり着いたパーティは……、もちろん「ひみつ!」。知りたい人は絵本をぜひ。子ども時代、心ゆくまで、想像の世界で遊んだことを思い出します。色鉛筆、絵の具、写真を組み合わせたりと様々な技法を駆使しつつも、バーニンガムのなんともいえないユーモアのある絵が魅力的な1冊です。


  • 『はらぺこあおむし』 エリック・カール・作 森ひさし・訳 偕成社 1988年
  • 『マッチ売りの少女』 ハンス・クリスチャン・アンデルセン・文 クヴィエタ・パツォウスカー・絵 掛川恭子・訳 ほるぷ出版 2006年
  • 『すきすきだいすき』 ピヨートル・ウィルコン・文 ヨゼフ・ウィルコン・絵 いずみちほこ・訳 セーラー出版 1992年
  • 『てぶくろ』 エフゲニー.M.ラチョフ・作 うちだりさこ・訳 福音館書店 1965年
  • 『きりのなかのはりねずみ』 ユーリー・ノルシュテイン,セルゲイ・コブロフ・作 フランチェスカ・ヤルブーソヴァ・絵 こじまひろこ・訳 福音館書店 2000年
  • 『コウノトリはどこへいく』 アンドレア・ぺトルリック・フセイノヴィッチ・作 岡田好恵・訳 講談社 2009年
  • 『セロひきのゴーシュ』 宮沢賢治・著 茂田井武・絵 福音館書店 1966年
  • 『だいくとおにろく』 松井直・再話 赤羽末吉・画 福音館書店 1967年
  • 『空城の計』 唐亜明・文 于大武・絵 岩波書店 2011年
  • 『かさどろぼう』 シビル・ウエッタシンハ・作/絵 いくまのようこ・訳 徳間書店 2007年
  • 『あさになったのでまどをあけますよ』 荒井良二・著 偕成社 2011年
  • 『めぐる月日に』 エリック・バトゥー・作 谷内こうた・訳 講談社 2002年