ねずみの絵本

安曇野ちひろ美術館では、現在
ちひろ美術館コレクション展 ねずみとはりねずみの絵本
を開催中です。[2020年6月27日(土)~2020年8月30日(日)]

展覧会にあわせて、「ねずみが登場する絵本」をご紹介します。

『のねずみチュウチュウおくさんのおはなし』

ビアトリクス・ポター・作、絵 いしいももこ・訳
出版社:福音館書店
出版年:1972年

野ねずみのチュウチュウおくさんは、とってもきれい好きでやかましや。生け垣の土手にほった巣穴はいつも清潔にそうじされていて、迷い込んできた虫たちは次つぎに追い払われてしまいます。ところが、マルハナバチのバビティー・バンブルは食料部屋に巣をつくり、カエルのジャクソンさんときたら、勝手にびしょぬれの足のまま居間に上がり込み……。
ビアトリクス・ポター(1866‐1943年)は、世界中で愛される「ピーターラビット」で知られたイギリスの絵本作家。子どものころから生きものが大好きで、弟といっしょに部屋でハツカネズミやカエル、トカゲやコウモリなどを飼っていたといいます。幼少期より絵の才能にもたけ、動物の絵を模写したり、昆虫や植物をスケッチに残したりしています。この絵本に登場するテントウムシやクモ、ハチや蝶などの描写からは、彼女の丁寧な観察力とともに生きものへの深い愛情が感じられます。

『ね,うし,とら……十二支のはなし』

中国民話より
ドロシー・バン・ウォアコム・文 エロール・ル・カイン・絵 へんみ まさなお・訳
出版社:ほるぷ出版
出版年:1978年

ね(鼠)、うし(牛)、とら(虎)、う(兎)、たつ(龍)、み(蛇)、うま(馬)、ひつじ(羊)、さる(猿)、とり(鳥)、いぬ(犬)、い(猪)。中国の暦には12種類の動物が登場します。誰が一番初めの動物になるか――強い「牛」と賢い「鼠」が、干支の順番をめぐり、皇帝の前で知恵比べをしました。
鮮やかな色彩と緻密な描き込みを得意とするエロール・ル・カイン。中国の民話をもとにした本作では、人物や動物は均一な線を、樹木や山々は水墨画を意識したにじみを使って、中国の絵画になぞらえ描いています。東洋と西洋の美を融合させながら、独自の画風を模索した1作となっています。

『14ひきのぴくにっく』

いわむらかずお・作
出版社:童心社
出版年:1986年

おとうさん、おかあさん、おじいさん、おばあさん、そして10匹の子どもたちのねずみの家族を描いた「14ひき」シリーズの5作目。秋に引っ越し、寒い冬を越えた14匹は、うららかな春の日に野原へピクニックに出かけます。ぴーぴー鳴いているエナガのあかちゃん、むっくりと顔を出したぜんまいに、やまぶき、ちごゆり、ふでりんどう、つくしんぼ。草陰に隠れている生き物は……?命が芽吹く春の森には、発見がいっぱいです。
自分にとっての原風景が「雑木林のなかの家族の情景」だと語るいわむらは、1975年に栃木県益子町へ移り住み、そこでの生活体験をもとに「14ひき」シリーズを制作しました。草花は、葉や花びらの一枚一枚まで緻密に描かれ、14匹が住む世界がリアリティをもって感じられます。構図に注目すると、ねずみたちの視点や俯瞰からとらえられ、森の自然がよりダイナミックに表現されています。14匹の家族は、笛を吹いて家族の音頭をとる長男・いっくん、モンシロチョウのりぼんに驚く四女・よっちゃん、一人ではまだ服がうまく着られない末っ子・とっくん、と個性豊かに描き分けられています。読み終わった後には、お弁当を持って、青空の下を歩きたくなる一冊です。

『ももんがもんじろう』

村上康成・作
出版社:講談社
出版年:2015年

ももんが、という動物を見たことがあるでしょうか?ネズミ目リス科リス亜科モモンガ族に属し、つまりねずみの一種で、空を飛ぶのが特徴です。でも、ももんがのもんじろうは、まだ若く、飛んだことがなく、世間を知りません。夜の空を見てひとりぶるぶる震えていたところ、とまっていた杉の木がゆれて、空に放り出されます。さあ、もんじろうの冒険のはじまり、はじまり!
1日の時間の流れとともにあざやかに変化する空の色、村上の得意とする、さまざまなアングルからの描写、そして、しゃれのきいた文章に、もんじろうと一緒に飛んでいる気持ちになります。「どーこかでー、だーれかがー♪」木枯らし紋次郎ならぬ、ももんがもんじろうを応援したくなる1冊です。

『もぐらはすごい』

アヤ井アヤ子・著 川田伸一郎・監修
出版社:アリス館
出版年:2018年

みなさんは、「もぐら」という生き物を知っていますか?もぐら という名前は知っていても、実際にその姿を見た人は少ないのではないでしょうか?ましてや、食べているものや、住んでいる場所は……?
もぐらは、ねずみによく似た姿をしていますが、分類上はネズミ目ではなく、日本のもぐらはトガリネズミ目に分類されています。ねずみとは、親戚のような関係でしょうか。
著者アヤ井アキコにとって初めての自作絵本である本書。知っているようで知らないもぐらの生態をわかりやすく説明するだけでなく、生まれたトンネルを離れ、新天地を目指して危険な旅に出るもぐらの生涯などが、冒険物語のように臨場感たっぷりに描かれています。土を掘る動きは上から、トンネルを進むようすは横からと、視点を変えて紹介するほか、みみずを捕まえるシーンを漫画のようなコマ割りで描くことで、もぐらの動きがリアルに伝わってきます。
監修は、現在、国立科学博物館の動物研究部研究主幹を務めている「もぐら博士」こと川田伸一郎。本の末尾では、川田氏の解説とともに、目のかわりに働く鼻の触覚センサー「アイマー器官」など、より詳しいもぐらの生態を知ることができます。
この本を読んで、あなたも「もぐら博士」への第一歩を踏み出してみませんか?