「ちひろ 本を読む人 描く人」担当学芸員のつぶやき②
現在安曇野ちひろ美術館では、秋の展覧会「ちひろ 本を読む人 描く人」を開催しています。
今回は…しぶいけれど、いいね!本を読む人のスケッチをいくつかご紹介します📖
ちひろは、駆け出しのころには、スケッチブックと鉛筆をいつも持ち歩き、身近な人だけではなく、電車のなかや、町のなかでも目に留まった人々を観察して描いていました。本を読んでいる人は、あまり動かないので描きやすいのでしょうね。

いわさきちひろ 窓の下の子ども 「婦人民主新聞」より 1948年
こちらは、原画は残念ながらのこっていませんが、新聞記事のために描いた作品。
ちひろは記事の文章も書いていて、「今日はしずかに本をよんでいる三人の女の子をかきました。夕方のすずしい風が、このやけのこつたうら街をふいています」としめくくっています。
まだ敗戦後間もないころ、本も今のように沢山はなかったのでしょう。
熱心に本を読む少女たちが履いているのが下駄であるところに時代を感じます。

いわさきちひろ 本を読む女 1949年
1949年の12月末にスケッチされた、こちらの女性。
本の下にはバッグらしきものが見えるので、電車のなかでしょうか。コートの間から見える服の模様もちひろはしっかり描いています。さすが、おしゃれ好きなちひろ♡
この女性を描いたスケッチはもう1点あるので、展示をご覧になる方はぜひ見比べてみてください。

いわさきちひろ 本を読む男の子2態 1954年頃
こちらのスケッチは、あれ、どちらが上でしょう。
同じページに違う方向からおそらく一人息子の猛と思われる男の子がスケッチされています。
あまり子ども時代本を読むことはなかったと猛本人はふりかえっていますが、その貴重な一瞬をとらえた1枚です。

いわさきちひろ 箱に腰かけて本を見る女の子 1950年代前半
現在展示されている20点のスケッチのなかには、初出展作品がなんと10点もあります。そのなかで特に私が好きなのがこちら。
本を読むと自然と人はうつむきますが、この子は本を高くもっているので、顔が少し見えますね。
まるい頭に手足のようすなど、きっとちひろの「かわいい」センター がピピッ!と働いたのでしょう。
地味だけれど味わい深い、ちひろのスケッチにもどうぞご注目ください。
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