『窓ぎわのトットちゃん』朗読会

安曇野ちひろ美術館では、開催中の展示「ちひろ没後40年 絵本になった!『窓ぎわのトットちゃん』展」(3月1日~5月13日)に関連し、4月20日に、『窓ぎわのトットちゃん』朗読会を開催しました。

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読み手に迎えたのは、abn長野朝日放送アナウンサーの蔵田玲子さん。『窓ぎわのトットちゃん』に収録されている作品と、展示に出展された作品などを織り交ぜて構成したちひろの絵をスライドで鑑賞しながら、黒柳徹子の幼少期を描いたトットちゃんの物語の朗読が始まりました。授業中にチンドンやさんを呼び込んだり、机のフタを百ぺんくらいパタンパタンと開け閉めしたり……。トットちゃんが小学1年生で普通の学校を退学になる場面では、トットちゃんとお母さん、担任の先生の3人が、まるで演劇のように演じ分けられ、会場からは笑い声が上がりました。蔵田さんのいきいきとした朗読で、ユニークなトットちゃんの世界が豊かに表現されていきます。

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朗読の合間には、いわさきちひろの一人息子の松本猛をゲストに、「徹子の部屋」ならぬ「玲子の部屋」と題した特別対談も行いました。番組さながら「徹子の部屋」のテーマ曲で登壇したふたりが、大きな歓声と拍手で迎えられます。対談では、現在、ちひろ美術館の館長を務める黒柳徹子とちひろの遺族との交流や、日本最大のベストセラーであり、いまなお世界中で愛され続ける『窓ぎわのトットちゃん』の制作当時の秘話などが語られました。

また、親子のコミュニケーションを深めるために絵本の読み聞かせが見直されているという話では、蔵田さんがちひろの絵本『となりにきたこ』を会場に向かって読み聞かせるという、即興おはなしの会にも挑戦。本文を読み進めるだけでなく、描かれた絵について触れたり、質問を投げかけたりと、読み手と聞き手が会話をしながら、絵本を楽しむ方法なども披露されました。

後半の朗読では、将来、トモエ学園の先生になる、と小林宗作校長先生と約束するトットちゃんや、第二次世界大戦でトモエ学園が焼けてしまう場面が朗読されます。戦禍を受けてもなお、教育への情熱を失わない校長先生が描かれた章では、涙を拭う参加者の姿も見られました。

ちひろ没後40年の記念に、今年の7月に絵本としての出版が決まっている『窓ぎわのトットちゃん』。さらにちひろの絵がたくさん入り、トットちゃんと同じくらいの小さな子どもたちにも親しみやすい絵本として生まれます。この朗読会は、世界中で愛されているトットちゃんの物語を改めて堪能できる機会となりました。再びトットちゃんに出会える絵本の出版がより一層楽しみになった一日でした。(入口あゆみ)