武田美穂展 見どころ紹介①『となりのせきのますだくん』

ちひろ美術館・東京で開催中の「武田美穂展 絵本づくりはドキドキなのだ!」。
その見どころを、何回かにわけて紹介していきます。

1回目は、『となりのせきのますだくん』についてです。

わたし、きょう、学校へいけない気がする。だって……。
となりの席のますだくんが怖くてしかたないみほちゃん。ますだくんは、消しゴムのカスがはみ出すと椅子を蹴ったり、給食で嫌いなニンジンを残すと大きな声で先生に告げ口したり……。みほちゃんにとってますだくんはまるで怪獣のよう。お気に入りの鉛筆を折られたことで、とうとう泣き出してしまって……!?

『となりのせきのますだくん』作・絵 武田美穂 ポプラ社

1991年に刊行された『となりのせきのますだくん』(ポプラ社)は、今年、刊行35周年を迎えます。幼いころの画家自身の姿にも重なる内気で繊細な少女みほちゃんと、同じクラスの少年ますだくんが登場する絵本は、子どもたちからの絶大な支持を得て、全5作のシリーズとなりました。

本作は、映画監督で脚本家でもあった父親の影響から、映画の手法を取り入れてつくられています。ひとつの場面を枠線でくくる漫画のコマ割りのような手法も、映画の絵コンテから発想を得たといいます。コマ割りの枠線から体をはみ出すように描くことで、みほちゃんが感じているますだくんの威圧感を表したり、線の外に小さなみほちゃんを登場させて心情を語らせたり、枠線と周囲の余白を使って少女の心の世界を巧みに描き出しています。

武田美穂『となりのせきのますだくん』(ポプラ社)より 1991年

シリーズが進むにつれて、1頁のなかのコマの数は多くなり、子どもたちを取り巻く状況や、それぞれの個性や心情がより丁寧に描き出されていきます。

武田美穂『ますだくんとまいごのみほちゃん』(ポプラ社)より 1997年

絵本の原画にはカラーコピーが使用されています。制作当時は、まだ今ほどカラーコピーの性能が良くなかった時代、温湿度で変化するカラーコピーの色味のバランスやムラが気に入り、絵に生かそうと考えたといいます。カラーコピーの上からさらに色鉛筆でニュアンスを加え、仕上げの彩色を施すなど、制作のプロセスも紹介しています。

みほちゃんの視点からは怪獣のように見えるますだくんですが、続編『ますだくんのランドセル』では、やんちゃで不器用ながらも、世話好きでやさしい性格が丁寧に描かれています。ますだくんのモデルについて、武田はこう語っています。

ますだくんのちょっとにらむような目つきは、当時の担当編集者さんがモデルです。絵本のラフのしめきり日、なんにも出来てなくて「ああ、目つきの悪い編集者がもうすぐやって来る、、、あたまが痛いって言ってさぼろうか、お腹が痛いって言おうか、熱があるって言おうか、、、」それがそのまま絵本の冒頭のセリフになりました。
武田美穂 2026年

武田美穂『ますだくんのランドセル』(ポプラ社)より 1995年

本展では、“ますだくん”シリーズから、『となりのせきのますだくん』『ますだくんのランドセル』『ますだくんとまいごのみほちゃん』の3作品を、資料とともに展示しています。

🍉夏の展覧会:7/25(土)~10/25(日)
武田美穂展 絵本づくりはドキドキなのだ!
《同時開催》ちひろ 子どもは平和のシンボル