「96才、画家。ユゼフ・ヴィルコン。 ―ポーランドの巨匠―」学芸員のみどころ①
現在、安曇野ちひろ美術館では「96才、画家。ユゼフ・ヴィルコン。ーポーランドの巨匠ー」を開催しています。今回から3回にわたり、展示の見どころをご紹介します。
本展では、ユゼフ・ヴィルコンの画業を、技法の変遷に注目してご紹介しています。
そのことにより、ヴィルコンがさまざまな技法に挑戦し続けたことが分かるかと思います。
今回は、その第1章ともいえる「液体による実験」と彼が名付けた時期の作品をご紹介します。
ヴィルコンの絵本デビューは1959年ですが、当館が所蔵しているヴィルコンの作品で一番古いのが1960年初頭に描かれたクジャクたち。水がしみこんだ紙に、ぽたりと落とした絵の具のじわじわとした広がりで、クジャクの羽根の模様が表現されています。ヴィルコンはその頃、ヨーロッパの現代美術の世界を賑わせていたタシスムや、ドリッピング(※)が気になっており、絵本イラストレーションにも取り入れたのです。
そのいきさつは?ヴィルコンはある日、一人息子のピョートルをつれてワルシャワのワジェンキ公園にでかけました。そこで偶然目にしたのが、公園のクジャクたちが池にうつっている姿でした。な、なんと美しい!と心を打たれ、急いで家にかえり、アトリエにこもって紙と筆洗と水彩絵の具とインクで「液体による実験」を開始します。
2、3日すると床中が、クジャクの絵で一杯になり、その絵を出版社に持参し、そこに詩や文章をつけて、できあがった絵本がPawie Wiersze (『クジャクの詩』、Tadeusz Kubiak 文、1961年刊、未邦訳)とPrzygoda Pewnego Pawia(『あるクジャクの冒険』、Stanisław Szydłowski文、1963年刊、未邦訳)の2冊でした。当館には、後者のための作品や習作が所蔵されており、現在4点を展示しています。
クジャクに、かたちと色彩の美を見出したのは、さすが、画家、芸術家ですね。
繊細かつ大胆なクジャクたちの雄姿をご覧ください。
※タシスム:紙やキャンバスに絵の具を垂らして表現する絵画の技法。
※ドリッピング:絵の具を滴らせる技法。


アトリエでクジャクを描くヴィルコン 1960年代初頭 撮影:Zbigniew Matuszewski

ユゼフ・ヴィルコン『あるクジャクの冒険』より 1963年,1960年

ユゼフ・ヴィルコン『あるクジャクの冒険』より 1963年,1960年
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