長新太 『ちへいせんのみえるところ』(エイプリル・ミュージック)より 1978年

「てなわけで20年。魅惑のチョウ、シンタ展」学芸員のつぶやき②

「てなわけで20年。魅惑のチョウ、シンタ展」学芸員のつぶやき②
現在開催中の展覧会を、担当学芸員がご紹介します。

ユーモアとナンセンスの王様・長新太の没後20年となる今年。安曇野では、長新太が描いた作品や資料を4つのテーマで紹介する展覧会を開催中です。

テーマその2「魅惑の『でました。』」

絵本作家でありエディトリアルデザイナーでもあった堀内誠一の勧めで、1958年に初の絵本『がんばれ さるの さらんくん』を描き、長新太は子どもの本の分野へも活躍の場を広げました。

テーマ「魅惑の『でました。』」では、“なにか”が出てくる4冊の絵本を紹介しています。
なかでも、ナンセンス絵本の傑作といわれる『ちへいせんのみえるところ』(1978年)は、斬新かつ革新的な1冊です。
「でました。」のひとこととともに、暗雲が垂れ込む荒野(のような場所)に、突如、ゾウやエイ、飛行船までもが登場します。次はなにが出るのか?いったいここはどこなのか?頁をめくるほどにパラレルワールドへと迷い込み……、最後は何ごともなかったかのように、再び荒野が広がります。

長新太 『ちへいせんのみえるところ』(エイプリル・ミュージック)より 1978年

長新太 『ちへいせんのみえるところ』(エイプリル・ミュージック)より 1978年


長新太 『ちへいせんのみえるところ』(エイプリル・ミュージック)より 1978年

長新太 『ちへいせんのみえるところ』(エイプリル・ミュージック)より 1978年


長新太 『ちへいせんのみえるところ』(エイプリル・ミュージック)より 1978年

長新太 『ちへいせんのみえるところ』(エイプリル・ミュージック)より 1978年

全頁同じ構図の背景ですが、よく見ると筆跡や線が異なり、1枚1枚描いていることがわかります。
「新たに描くことによって、心を新たにするというか。今はパソコンなんかで簡単に操作できるんだけど、やっぱり描かないと気がすまないっていうのがあって」と語っていた長新太。シュールな展開もさることながら、変化に富んだ美しい画面も見どころです。
この機会にぜひ原画をご覧ください。