[表紙の作品]いわさきちひろ 野菊と少女 1969年
ひとりたたずむ少女は、群れなすように咲く黄金色の野菊をつぶらな瞳で静かに見つめています。しなやかに伸びる野菊は風になびいているのでしょうか、あるいは、少女になにかを語りかけているのかもしれません。背景に広がるオークル色のなかで、少女の姿は、紙の地の白をそのまま残した「白抜き」の技法でとらえられています。やわらかなにじみにつつまれた少女の姿はやさしい光を放っているようにも見えます。その姿は、手前の余白と照応して、秋の澄んだ光とともに、冷涼な空気をまとっているようにも感じられます。秋のひととき、野の花を愛でる少女の平穏で満ち足りた気持ちが伝わってきます。
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