節分の日に

いわさきちひろが絵を描いた『おにたのぼうし』(あまんきみこ・文 ポプラ社)は、教科書に掲載されたことから、ご存知の方も多いかもしれませんね。おにたは、人間の知らない間に手助けをする気立てのよい黒おにの子どもですが、ある女の子の願いをかなえて、おはなしの最後に姿を消してしまいます。


切なく複雑な思いを残すおはなしに、ちひろもなにかを感じたのかもしれません。絵本の扉絵に、ちひろはある絵をそえています。そこには、帽子を取り本来の姿のまま、女の子に語りかけているおにたが描かれています。おにたと女の子、そして読者である子どもたちへ、ちひろは静かにメッセージをおくり、成長していく彼らの背中を押しているように感じます。

いわさきちひろ おにたと少女『おにたのぼうし』(ポプラ社)より 1969年

節分の日に、ぜひこの絵本を手にとってみてください。読み終えたらもう一度、表紙をひらいて扉絵をご覧になってみてくださいね。

※ちひろ美術館・東京は2月末日まで、冬期休館中です。
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