新たな暮らしのなかで(若い苦しみに満ちた人たちよ……)

この春から新社会人、新入生、引越しをされた方など、生活環境が大きく変化した方も多いのではないでしょうか。緊張する毎日に、疲れが出るころかもしれません。
いわさきちひろもまた、戦後すぐに単身上京し、心もとない状況のなかから画家として生きる決意をし、実現へとつなげていきました。のちに次のようなことばを残しています。

「若い苦しみに満ちた人たちよ。その若い魂と体でどうかがんばっていただきたい。若いうちに苦しいことがたくさんあったということは、同じような苦しみに堪えている人々に、どんなにか胸せまる愛情がもてることだろう。本当に強いやさしい心の人間になれる条件は、その人が経験した苦しみの数が多いほどふえていく。そして又、人の心をうつ、美しくやさしい心の作品をつくる芸術家にもなっていける。」
(『続・わたしのえほん』草稿より 1974年)

たとえ今は不安に心揺さぶられるような日があったとしても、その先に続く道が確かなものになっていきますように。厳しい境遇にあるとき、ちひろのことばを思い起こしてみてください。

◆いわさきちひろについて

いわさきちひろ 日がさし始めた街並み『ことりのくるひ』(至光社)より 1971年