展示作品から

ちひろ美術館・東京の展示室1・3・4では、「幼い日に見た夢いわさきちひろ展」を開催中です。
https://chihiro.jp/tokyo/exhibitions/54615/

この展覧会では、ちひろの幼少期に焦点をあて、ちひろが子ども時代に接した童画とそこから受けた影響、そして幼い日の思い出をテーマにした絵や絵本をちひろのことばとともに展示しています。

そのなかから「てるてるぼうずと少女」1971年を紹介します。

いわさきちひろ てるてるぼうずと少女 1971年

雨が多い季節になってきました。ちひろは雨の日の情趣を好み、さまざまな雨の情景を描いています。この絵は、5・6月のカレンダーのために描かれたものです。みなさまも、子どものころ、楽しみにしている行事のまえに、てるてるぼうずをつくった思い出がおありでしょうか?てるてるぼうずの右側の背景に注目してください。黄、青、紫の水彩絵の具が淡くにじませてあります。色彩の間からのぞく余白は光のように感じられます。戸外では雨が上がり、日が差し始めた様子を表しているのかもしれません。少女のわずかに口角を上げた口元や手の表情から、少女がてるてるぼうずに心のなかでなにかを語りかけていることが想像されます。この絵には、雨の日に室内で過ごしたちひろの子どものころの感覚や思い出が映し出されているのかもしれません。

ちひろは次のことばを残しています。

少女のころから絵を描くことだけが好きで終日、薄暗い部屋で絵を描いていた自分。そんなとき、窓の外の木の葉の上を、雨がどう流れ落ちていったか、ひんやりとした空気まで身近に感じながら思いおこすことができます。
いわさきちひろ 1970年

この他、本展ではちひろが1968年に描いた絵本『あめのひのおるすばん』(至光社)をピエゾグラフで紹介しています。是非、ちひろの絵を通して、雨の日のみずみずしい情感を味わってください。
(H.M.)