「子どものしあわせ」にちひろが込めた思い
臨時休館中のちひろ美術館・東京から、ご自宅でも展覧会を楽しんでいただける情報を発信しています。
いわさきちひろは1963年から1974年に没するまでの12年間、月刊雑誌「子どものしあわせ」の表紙絵を手がけました。画像は、「子どものしあわせ」(1963年3・4月合併号)を飾った、ちひろの最初の表紙絵です。ちひろはこの号に次のような文章を寄せています。
「子どものしあわせ」の表紙画を描いて
いわさきちひろ
働いている人たちに共感してもらえる絵を描きたいと、ねがいつづけてきた私は、自分の絵に、もっと「ドロ臭さ」がなければいけないのではないか―と、ずいぶん悩んできたものでした。
ドロンコになって遊んでいる子どもの姿が描けなければ、ほんとうにリアルな絵ではないかもしれない。その点、私の描く子どもは、いつも、夢のようなあまさが、ただようのです。
実際、私には、どんなにどろだらけの子どもでも、ボロをまとっている子どもでも、夢をもった、美しい子どもに、見えてしまうのです。
しかし、この「子どものしあわせ」の表紙は、そうした迷いをすてて、ほんとうにうれしく描けました。私は、工場の勤労者の生活は深く知らないかもしれませんけど、母と子の姿なら知っています。私も、子をもつ母親だからです。
迷うことなく、すっきりした、ある意味ではモダンなものを、思いきって描こうと決心して、絵筆をとりました。
そして、おもいました―これからは、「ドロ臭さをださなければ」などと苦しむのは、もう、やめようと。
画家としてのさまざまな試みの場であったこの仕事を通して、ちひろは創作意欲を開花させ、多くの代表作を生み出しました。本展では、当時の貴重な雑誌や資料とともに、表紙絵の初期の作品から絶筆「あかちゃん」までの12年の軌跡をたどります。
◆同時開催
没後10年 瀬川康男 坦雲亭日乗-絵と物語の間(あわい)
(K.R.)
※ちひろ美術館・東京は、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、2020年3月4日(水)から3月15日(日)まで臨時休館中です。
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