1971年(51歳)アトリエのちひろ

わたしも長い生命をもった、童画家でありたいと思う。

さざなみのような画風の流行に左右されず、何年も読みつづけられる絵本を、せつにかきたいと思う。もっとも個性的であることが、もっとも本当のものであるといわれるように、わたしは、すべて自分で考えたような絵本をつくりたいと思う。そして、この童画の世界からは、さし絵ということばをなくしてしまいたい。
童画は、けしてただの文の説明であってはならないと思う。その絵は、文で表現されたのと、まったくちがった面からの、独立したひとつのたいせつな芸術だと思うからです。

「なかよしだより」(講談社)455号(1964年10月)より

その人の成長につれてふくよかにより美しく成長し、心の糧になっている。

童画を描いている私は、それがちょっとおそろしい気もするけれど、しあわせなことだとしみじみ思う。

「こどものせかい」付録(至光社) 1968年より

どんどん経済が成長してきたその代償に、人間は心の豊かさをだんだん失ってしまうんじゃないかと思います。

それに気がついていない若者は多いのでしょうけれど、私はそのことに早く気づいて、豊かさについて深く考えてほしいと思います。私は私の絵本のなかで、いまの日本から失われたいろいろなやさしさや、美しさを描こうと思っています。それをこどもたちに送るのが私の生きがいです。

「人生手帳」(文理書院)1972年12月号より

本を抱える少女 1970年