[表紙の作品] いわさきちひろ おつむてんてん 1971年

この子は、ようやくお座りができるようになったころでしょうか。つぶらな瞳でこちらを見つめ、「おつむてんてん」と頭に手をやる仕草をするあかちゃん。重たい頭を傾けて、今にもバランスを崩してコロンと横に倒れてしまいそうです。水彩絵の具のにじみや濃淡だけで身体の形やヴォリューム、質感までも表しています。やわらかな髪の表情は鉛筆のやわらかいなタッチでとらえています。ちひろは、折に触れて一人息子をスケッチしたほか、育児書の挿し絵を数多く手がけ、保育所にも取材してスケッチを重ね、後年、モデルを見なくてもあかちゃんの月齢まで描き分けることができるようになりました。