展示作品より① 谷内こうたの絵本に見る光
現在開催中の「谷内こうた展 風のゆくえ」から、いくつか作品をご紹介します。
谷内こうたの絵本にはさまざまな魅力がありますが、そのひとつに絵本によって異なる、光の表現があります。
『のらいぬ』(至光社、1973年)では、まぶしい夏の太陽が真上から少年と犬を照らしていることが、雲のほとんどない澄みきった空や、犬と少年の下にわずかに見える小さな影から伝わってきます。(図1)
少年は、顔に麦わら帽子をのせているので、横から、上からとアングルが変わっても、表情は見えないものの、帽子の網目からも差し込んでくる光線が目に入らないように目を閉じているのでしょう。(図2)
周囲の砂浜には影がほとんどないために、のらいぬの、黒い色がより一層、強い印象を与えます。
『かえりみち』(至光社、1978年、絶版)では、少年が家へ帰るまでに、刻々と日が沈んでいくようすが、子どもたちや建物の影で分かります。オレンジ色に染まった地面に長くのびた影は、どこかユーモラスです。画面からは、乾燥した空気や、石の建物や地面に響く声やバスケットボールの音までが感じられるようです。(図3)
これらの地上のようすを眺めるかのように、建物の上で羽根を休めている鳩の背景の空や雲の色は、ヨーロッパの古典絵画を彷彿とさせますが、この絵は、谷内の当時のアトリエから見えた眺めだったそうです。(図4)
ヨーロッパへ渡り、フランスにアトリエを構えた谷内こうたは、日本とはまた異なる光のなかで、絵を描き続けました。(M.M.)
8月19日(土)には 、当館学芸員が開催中の展覧会の見どころなどをお話しする、ギャラリートークを開催いたします。企画展「谷内こうた展 風のゆくえ」をわかりやすくご紹介しますので、ぜひご参加ください。
日時:8月19日(土)14:00~
参加費:無料(入館料別)
定員:15名
申し込み:当日10時より受付にて整理券をお配りします。
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