
「ヒロシマ
トマト 司修展」学芸員のつぶやき②
現在開催中の「ヒロシマトマト 司修展」を、展示担当学芸員がご紹介します。
今回は、『まちんと』について。
展覧会のタイトルを聞いて、見て、「?」と思われた方がいることと思います。これは、司修本人から、子どもが簡単に覚えられ、「なんだろう」「行ってみたい」と思ってくれるようにしたい、と提案のあったタイトルなのです。ロゴも、司自身がデザインしました。
なぜトマトか、というと、『まちんと』の主人公の女の子が被爆し、苦しんで寝ていたときに口に入れてもらったのが、トマトだったからなのです。象徴的なトマト、そして少女はどうなったか、絵本を手に取って読んでみてくださいね。
『まちんと』の絵本には、実はトマトは描かれていません。そのかわり、原爆が投下される前の青い空、爆発によって赤く燃える町。焼け跡の暗い町。鮮やかな色が目の前に広がります。

『まちんと』(偕成社)より 1978年・1983年
司は、この本のための絵を依頼されたときに、戦争の話であるが、子どものための本を、どのように描いたらよいか、大変悩み、原稿用紙をいつもポケットに入れて歩いていたといいます。そして、1年かけて描きあげたものを作者と編集者に見せたときに、再度全て描きなおすと告げ、さらに1年かけて絵を完成させました。表紙には、司が9歳のときに、空襲で焼けた前橋で見た、夏の花、ひまわりが描かれています。

『まちんと』(偕成社)より 1978年・1983年
司が渾身の思いで取り組んだ、『まちんと』。
その絵を見て、なにを感じますか。
▽開催中の展覧会
2025年5月16日(金)~7月21日(月・祝)
ヒロシマトマト 司 修 展
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