「子ども読書の日」に

私が力がなくて無力なとき(いつもそうなのだろうけれど)、人の心のあたたかさに本当に涙ぐみたくなる。
この全く勇ましくも雄々しくもない私のもって生まれた仕事は絵を描くことなのだ。たくましい、人をふるいたたせるような油絵ではなくて、ささやかな絵本の絵描きなのである。
そのやさしい絵本を見たこどもが、大きくなってもわすれずに心のどこかにとどめておいてくれて、何か人生のかなしいときや、絶望的になったときに、その絵本のやさしい世界をちょっとでも思いだして心をなごませてくれたらと思う。
それが私のいろんな方々へのお礼であり、生きがいだと思っています。
ちひろ最晩年の手帳より 1973年

いわさきちひろ 花のなかから生まれたおやゆび姫 1966年

今日は、「子ども読書の日」です。
子どもたちが本に親しみ、やさしく、豊かな世界を心に育みますように。
その機会が、等しく全ての子どもたちに与えられますように。