瀬川康男展 おうちでギャラリートーク 2「絵巻平家物語」

臨時休館中のちひろ美術館・東京から、ご自宅でも展覧会をお楽しみいただける「おうちでギャラリートーク」をお届けしています。

没後10年 瀬川康男 坦雲亭日乗-絵と物語の間(あわい)
おうちでギャラリートーク 2「絵巻平家物語」

坦雲亭に移った翌年の1983年、瀬川のもとに絵本シリーズ『絵巻平家物語』の仕事が舞い込みます。文章を書いた作家・木下順二の強い意向もあり、瀬川は「木下先生の思いにも答えたいし、絵描きとしても、歴史のただなかに、真正面に挑んでいこう」と引き受けます。

瀬川康男 『絵巻平家物語(三)文覚』(ほるぷ出版)より 1986年 個人蔵

瀬川康男 『絵巻平家物語(五)清盛』(ほるぷ出版)より 1987年 個人蔵

瀬川康男 『絵巻平家物語(九)知盛』(ほるぷ出版)より 1990年 個人蔵

瀬川康男 『絵巻平家物語(九)知盛』(ほるぷ出版)より 1990年 個人蔵

丹念な取材と膨大な資料をもとに、自分自身に一切の妥協を許さず、取り組んだ仕事でした。「調べつくした後に今度は忘れないと絵にならない」と、知識を無意識のなかに沈み込ませるため、一日にスケッチブックを一冊描き潰しました。

瀬川康男『絵巻平家物語 知盛』のためのスケッチ
知盛の母・二位尼が、幼い安徳帝を抱いて入水する場面

「(細密画を)いっぺんやってみないとあかんと思っているんですよ。どこまで細かくやれるか。それをやりつくしたところで、絵とは、どういうもんか考えられると思っているんですよ。」
瀬川康男 1979年

瀬川康男 「坦雲亭日乗」より 1990年7月14日

かつて語ったこのことば通りに、50代のほぼすべての時間をかけ、重厚で高雅な現代絵巻の世界を描き出しました。『絵巻平家物語』は、坦雲亭での仕事を代表する重要な一群となったのです。

ちひろ美術館・東京 第2展示室

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没後10年 瀬川康男 坦雲亭日乗-絵と物語の間(あわい)

(K.R.)

※ちひろ美術館・東京は、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、2020年3月28日(土)、29日(日)を臨時休館といたしました。最新の情報は随時このHPでお知らせいたします。