水仙の花

1月14日(日)まで開催中の展覧会 いわさきちひろ やさしさと美しさと では、水仙の花が描かれた作品を2点出展しています。いずれの作品にも、ふたりの人が花とともに描かれており、視線の先に白い可憐な花があります。

ひとつの作品は、同じような年齢のふたりの子どもが、花と同じような高さに、あたかも語らうようなかたちでこの花とともにいます。手前にはつくしの芽が見られ、もうすぐ春が近いことが感じられます。子どもと花が画面の上下左右の四方からにょきにょき、とあらわれているものの、違和感を見る人に与えないのは、古来の日本の画家も同じような構図を使うことがあったからでしょう。

いわさきちひろ 水仙とつくしを見る子ども 1960年代後半

もうひとつの作品では、あかちゃんが母親に抱かれて、目の前に咲く水仙をじっと見ています。肌の色と、水仙の色の他は紙の白地に勢いのある鉛筆線だけで、大胆に描かれています。花の向こう側にいる親子を見ている私たちですが、あかちゃんは次にはこちらに目をむけるかもしれない、とさえ思わせます。

いわさきちひろ 水仙のある母子像 1972年

ふたつの作品からあたかも出てきたような、水仙が、ちひろ美術館・東京のエントランス横や庭に、今咲いています。いわさきちひろ生誕の地、福井県(武生、現・越前市)より2009年に贈られた、この越前水仙は、日本海の越前海岸へせり出す山々で咲き、雪が積もっても折れることなくまた起き上がるといわれています。今年の正月に能登半島を襲った地震で被災された地域の方々が、はやく、また普段の生活に戻れるよう、祈る気持ちです。