［表紙の作品］いわさきちひろ　水仙とつくしを見る子ども　1960年代後半

この少年と少女は野原に寝そべって春のきざしを見つけて、心を動かしているのかもしれません。真横から描かれた少女は水仙と、俯瞰してとらえられた少年はつくしと対応するように配置されています。少年のセーターの紫色と水仙の副花冠の黄色、そして、少女のセーターの桃色と水仙の葉の緑色は、それぞれ補色の関係にあります。余白をいかしたやわらかな色合いのなかにつくられた鮮やかな対比が画面をひきしめています。さらに背景にはこれらの色と響きあう色彩の淡いにじみが花綱装飾のように楕円形に配置されています。あえて中央に残された空白に、ふたりの心象が映し出されてくるようです。