アンデルセンと宮沢賢治の絵本

「ちひろが愛したアンデルセンと宮沢賢治」展(安曇野ちひろ美術館・展示室1)
「世界の画家たちの愛したアンデルセンと宮沢賢治」展(安曇野ちひろ美術館・展示室3)開催中

<アンデルセンの絵本>

『白鳥』
『白鳥』
アンデルセン・作 マーシャ・ブラウン・画 松岡享子・訳

出版社:福音館書店
出版年:1967年

白鳥に変えられた11人の兄王子を救うために、さまざまな苦難を乗り越えていく王女エリザの物語。「しなやかなみどりのつるくさがおい茂り、まるでししゅうしたカーテンをつるしたよう」というような、アンデルセン童話らしい美しく繊細な描写を、絵本をはじめ、多くの児童文学の翻訳を手掛ける松岡享子が訳しました。マーシャ・ブラウンは、グレーが基調の絵に朱色のみで彩色をしています。そのシンプルで力強い絵が、エリザの美しさと困難に打ち勝ち、愛する人たちを救おうとする心の強さを、いっそう引き立てています。この絵本が、日本に紹介されて45年余。その絵と文章の魅力は色あせず、アンデルセンの世界に惹きこまれます。


『ぶたかい王子』
『ぶたかい王子』
リスベート・ツヴェルガー・画 北村太郎・訳

出版社:冨山房
出版年:1987年

貧乏だけれど名の知られた王子は、結婚しようと、皇帝の王女にプレゼントを届けます。5年に1度しか咲かないすばらしい香りのバラと、美しい声で鳴くナイチンゲールです。しかし、王女は、その価値を理解できませんでした。そこで、王子は変装して宮殿に赴き、豚飼いの仕事をあてがわれます。仕事を終えた王子は、鈴が沢山ついた曲を奏でる不思議な鍋をつくります。たまたま近くを通りがかった王女はこの曲を耳にし、この鍋が欲しくなるのですが、さて、豚飼いに扮した王子は王女にどのように答えるのでしょう。ツヴェルガーは余白をたっぷりとり、人間の愚かさや愛おしさを見事に表現しています。


  • 『ぶどう酒びんのふしぎな旅』 H・C・アンデルセン・原作 藤城清治・影絵 町田仁・訳 講談社 2010年
  • 『イーダちゃんの花』 H・C・アンデルセン・原作 角野栄子・文 市川里美・絵 小学館 2004年
  • 『おやゆびちーちゃん』 H・C・アンデルセン・作 木島始・訳 堀内誠一・画 福音館書店 1967年
  • 『おやゆびひめ』 H・C・アンデルセン・作 斉藤洋・文 西巻茅子・絵 岩波書店 2002年
  • 『おおきなおとしもの』 H・C・アンデルセン・原作 ジャン・ウォール・文 レイ・クルツ・絵 ともちかゆりえ・訳 ほるぷ出版 1979年
  • 『みにくいあひるの子』 H・C・アンデルセン・作 スベン・オットー・S・絵 きむらゆりこ・訳 ほるぷ出版 1979年
  • 『アンデルセン自伝 わたしのちいさな物語』 イブ・スパング・オルセン・絵 乾侑美子・訳 あすなろ書房 1996年
  • 『マッチうりの少女』 H・C・アンデルセン・作 ブレア・レント・絵 しかわすみこ・訳 ほるぷ出版 1979年
  • 『雪の女王』 H・C・アンデルセン・原作 ナオミ・ルイス・文 エロール・ル・カイン・絵 うつみよしこ・訳 ほるぷ出版 1981年
  • 『すずの兵隊さん』 H・C・アンデルセン・原作 フレッド・マルチェリーノ・絵 トーア・サイドラー・再話 おぐらあゆみ・訳 評論社 1996年
  • 『おやゆびひめ』 アンデルセン童話 リスベス・ツヴェルガー・絵 かど創房 1982年


<宮沢賢治の絵本>

『オツベルと象』
『オツベルと象』
宮沢賢治・作 荒井良二・絵

出版社:ミキハウス
出版年:2007年

ある日やってきた白い象を、我が物にしたオツベルは、100キロの鎖を前脚に、400キロの分銅を後脚の靴にはめこみ、たきぎを900把運ばせたり、ふいごの代わりに半日炭を吹かせたり、とこき使います。10日が過ぎ、象が山の象に助けを求めると、象たちが大群になってオツベルをやっつけようと押し寄せます。ユーモアと悲哀が同居する賢治らしい物語。荒井良二の勢いのある、混沌としつつも鮮やかな色彩の絵が、「白い象だぜ。ペンキを塗ったのでないぜ。」といった賢治独特の言い回しに合い、美しい白い象、オツベルの不遜さ、怒り狂う象がなだれ込むすさまじさなど、賢治の世界を存分に描きだしています。ミキハウスによる、現在、活躍する絵本画家が手掛ける宮沢賢治絵本シリーズの一冊。


『ひかりの素足』
『ひかりの素足』
宮沢賢治・作 赤羽末吉・絵

出版社:偕成社
出版年:1990年

兄の一郎と弟の楢夫は、父親が働く山小屋から家へ帰るために、雪の山をおります。ちょうど、炭をおろしに来た馬をひく人についてゆきますが、あと峠一つで家へ帰れると気が急ぎ、立ち話をする男を待たず二人だけでどんどん歩き出しました。しかし途中で雪が降り、立ち往生した二人が、ふと気づくと、不思議な国へ来ていて……。主人公が現生とあの世を行き来するこの物語には、賢治のアンデルセンへの敬愛も感じられます。赤羽の遺作となったこの作品では、彼が得意とする雪のさまざまな描写が目をひきます。


  • 『セロひきのゴーシュ』 宮沢賢治・作 茂田井武・画 福音館書店 1966年
  • 『セロ弾きのゴーシュ』 宮沢賢治・作 赤羽末吉・絵 偕成社 1989年
  • 『水仙月の四日』 宮沢賢治・作 赤羽末吉・絵 創風社 1997年
  • 『オッペルと象』 みやざわけんじ・作 きむらしょうへい・絵 ベネッセ 1991年
  • 『狼森と笊森、盗森』 宮沢賢治・作 片山健・絵 ミキハウス  2008年
  • 『いちょうの実』 宮沢賢治・作 及川賢治・絵 ミキハウス 2008年
  • 『なめとこ山の熊』 宮沢賢治・作 あべ弘士・絵 ミキハウス 2007年
  • 『双子の星』 宮沢賢治・作 遠山繁年・絵 偕成社 1987年
  • 『画本 宮澤賢治 雨ニモマケズ』 宮澤賢治・作 小林敏也・画 パロル舎 1991年