春の展覧会紹介 こころの色

ちひろの色使いに注目すると、背景の色が絵のなかの人物の心や状況を反映していると思われる作品があります。
例えば「まきばの うし」では、牛と子どもたちは牧場にいるため、背景は緑か茶色が自然に思われます。
しかし、ちひろが選んだのは鮮やかな赤。

企画協力の森口佑介氏は、「心理学の研究によると、赤い色は、『回避』を意味します。子どもたちの、接近したいけど、回避してしまう心情を表現しているように考えられます」と語ります。
この絵には、「こわくないよ ほっとけよ こっちいみてる きちゃだめだよ だけど やさしい めよ」とちひろによる詩が付けられています。
ちひろは、揺れ動く子どもの心の動きをとらえ、直感的に赤い色彩と水彩のにじみであらわしたのでしょう。
画家として、母としての視点に加え、子どもの心を持ち続けて描いていたちひろならではの表現です。

「こころの色」にちなんで、展示室4では、赤、黄、緑、青……と色相が移り変わるように作品を展示しています。

SNSでも少しずつ色の異なる作品を紹介してゆきますので、どんな「こころの色」か、想像してみてください。

画像:
いわさきちひろ 「まきばの うし」 1969年
いわさきちひろ お母さんに抱きつく子 『あめのひのおるすばん』(至光社)より 1968年
いわさきちひろ 野原に並ぶ子どもたち 1969年
いわさきちひろ 腰かける少女 1968年
いわさきちひろ 買いものかごを持つ少女 1969年